ウイルスとの共存を目指す フェーズ2へ突入

Q6. 外出自粛によるストレス、不安の解消法は?

 まず第一に、嫌なニュースばかりに着目しないこと

 テレビ番組は専門家が出ている落ち着いた報道ニュース系のみにして、不安を煽るようなトーンのワイドショー的なものは極力避けています。

 新型コロナ関連の情報取得は偏らないよう、新聞は1紙に決めず、ネットニュースも各社配信の記事をランダムに閲覧海外のニュースも、できるだけ現地発信の一次情報をチェック。冷静に俯瞰するようにしています。

 封鎖も外出自粛もあまりに非日常なので、最初は不安で不穏な気持ちに覆われますが、半月もすれば慣れてきます。

 世界も止まっているから自分だけが焦ることもないかな、と。それに気づいて、ちょっと気持ちが楽になりました。

 オフィシャルでサボれるこの期間は、海に行けないバカンス。読みたかった本も読み放題、見たかった映画も見放題……。

 外出禁止が延長されるとがっかりするので、解禁されることばかりを考えず、家族が健康、とりあえず屋根のある家にいられる、ゴハンが美味しいなど、今、目の前にある幸せを実感する癖をつけています。

 幸せの感じ方も癖かな、と(笑)。

Q7. ウェブサイトやSNSの新たな活用法は?

 新型コロナ発生前と特に使い方に変化はないですが、Twitterの使用頻度は上がりました。

 主にコロナ情報収集に活用しています。

 フォローやフォロワーの整理をして、新型コロナに関して落ち着いた発言をしている化学者、学者など識者中心の構成にしてみました。

Q8. 日々の暮らしで心がけていることは?

 Q6にも書きましたが、とにもかくにも美味しいゴハンを楽しい気分で食べること。

 また、家族との関係はいつも以上に密になるので、なんとか(笑)、仲良く過ごすようにしています。もっともハードな封鎖空間である宇宙ステーションでの“対人関係“を参考にすると良いそうです。

 文学や映画なども、できるだけ名作をチョイス。たいていの過去の名作は、不条理な出来事やそれを前にした人間の感情を説明してくれているもので、人間というものはあまり変わらないと気づかせてくれます。今のモヤモヤした不安を客観視でき、心を落ち着かせる作用もあるのでおすすめです。

 そして、美しいものを愛でる。芸術は心を救う、人間の暮らしに必要不可欠なものだと今回の新型コロナ問題で実感しました。世界の美術館やオペラ劇場がネットで公開しているアーカイブは要チェックです。

Q9. ふさぎこみがちな昨今、心温まる話があればぜひ!

 イタリアで最も被害が大きかった北部のベルガモから、わが街パレルモの病院に超重症患者が随時移送されていました。

 すっかり回復した元患者さんが、パレルモの医療体制と医療従事者の人道的な対応への感謝が報道されたり、シチリアで最高齢の感染者で100歳のおばあちゃんが回復したり、地元の医療の充実度を知り、ホッとしています。

 心が温まるというエピソードではないですが、「もし何かあっても助けてもらえそう」と思えて安心できました。

 あと、パレルモ在住の親元から離れて暮らす息子さんが「父が感染者となり他界。母は自宅でひとり鬱になり、ゴミ捨ての気力もなくなり実家はゴミ屋敷化。実家と母親を助けてくれ!」と訴えたビデオメッセージがSNSで拡散されました。

 その翌日には地元の救急隊が彼の実家に赴き、家の掃除と母親を救出という出来事もありました。

 これも地元の行政が(意外と)機能しているんだなぁ、と感じたホッとしたエピソードです。

 また、生活困窮者向けの無料食品提供がイタリア各地で自然発生的に始まったこと。パレルモでも、厳選食材店が「ここに入れられる食材がある人は入れて。必要がある人はそれを持って行って」と張り紙をした袋を設置。無料食品コーナーが海沿いに登場しました。

 ほかにも、子どもが自ら救急番号に電話してお礼を言ったとか、独居老人を近所の人が気にかけて食事の世話をしたり、定期的に電話したり、感染した飼い主向けに、ボランティアが犬猫レスキュー隊を発足したり、といった優しいニュースがしばしばあり、心が救われています。

 イタリア北部で最初に封鎖された街、コドーニョで最初に発覚した感染者が無事退院し、感染していた奥さまも無事出産してパパになったというニュースもありました。

 このように感染者が差別されることなく、炎上することもなく、みんながお祝いコメントを寄せていたことにホッコリしました。

Q10. CREA WEB読者にメッセージをぜひ!

 今回の新型コロナの問題では、つくづく情報リテラシーの大切さを感じました。

 できるだけ正確な情報を入手し、声高な偏向報道に踊らされず、理性的、科学的な視点で自分なりにデータを読み解くことが心の平穏につながります。

 人との交流を遮断することは、ペストが流行した中世時代から行われている、恐らくもっとも効果的な防疫。

 必ず効果が出るはず!

 実際、イタリアではロックダウンの効果はてきめんで、回復者が新規感染者数を上回りつつあり、南イタリアでは新規感染者がゼロの州も出てくるようになりました。

 この状況を鑑み、イタリアは5月4日(月)から段階的に封鎖を緩和する「ウイルスと共存を目指す」フェーズ2に入ります。

 抗体検査も進み、ワクチンの臨床試験もスタート。

 ワクチンによる抗体の効果は懐疑的な部分もまだあるようですが、治療薬の開発も進むでしょうし、この先は今より状況は良くなるでしょう。

 世界の価値観が変わるとも言われ、“元に戻る”のは難しいのかもしれません。ですが、世界が終わるわけでもなさそうです。

 競争や経済優先の世界から、もっと優しい世界になるのではないでしょうか。

※記事の内容は2020年4月28日(火)現在のもの。制度や現況の情報は一部であり、各自治体、エリアなどによって異なる場合があります。

岩田デノーラ砂和子

慶応義塾大学卒業。リクルートを経て2001年からローマへ。現在はシチリア島パレルモ在住。ライター/メディア&トラベルコーディネーター/通訳/翻訳。La Vacanza Italiana主宰。BLOG「ボン先輩は今日もご機嫌」にて、イタリアの新型コロナ関連情報を随時アップ中。