現在政府は、「新型コロナウイルスの感染者と接触した可能性が分かるアプリ」の開発をすすめている。アプリは試験的に2020年4月中にも導入されるとみられている。
4月11日には、アップルとグーグルが共同で、同じような機能をスマートフォンのOSに搭載する計画を進めていることが発表された。
これはどういう意味を持つのだろうか? そして、どんな価値を持つのだろうか? 現状でわかることをまとめてみよう。
「感染拡大防止スマホアプリ」とはなにか
現在、政府と民間が協力して開発が進んでいるアプリは、以下のような仕組みで動く。詳細は異なるものの、もともとはシンガポールで3月20日より導入されている「Trace Together」というアプリの仕組みに近いもので、アップル・グーグル連合が開発中の仕組みも同様である。
検知するのは「スマートフォンを持った人同士が、長時間一定より近い距離にいた」という状況のみ。スマホの位置や忘れ物をBluetoothをつかって探す機能があるが、あれに近い。
ただしGPSは併用せず、「どこにいたのか」という情報は記録されない。
スマートフォンには、ヘッドホンや周辺機器を接続するための無線通信技術「Bluetooth」が搭載されているが、これを使う。
Bluetoothを使うと一定の距離に相手がいることを検知できるので、10分以上なり30分以上なりの間、2m以上のいわゆる「ソーシャルディスタンス」が取られていない状態が続くと、「その人と濃厚接触があった」ということで、スマートフォンの中に情報が記録される。
だが、この段階では、利用者にも通知などはない。変化があるのは、このアプリを使っている人に「感染の事実が確認できた場合」だ。
検査によって医療機関から「感染者である」ことが認定された場合、アプリ利用者はサーバーへと「自分が感染者になった」ことを通知し、スマホの中に記録された「過去14日間に濃厚接触した可能性がある人のリスト」をアップロードする。
するとサービス側から、そのリストにある人に対して「あなたは最近、感染者と濃厚接触があったことが確認できた」という通知が届く。その人はそれに従い、自己隔離なり医療機関での検査なり、必要な措置を進めることになる。
その際には、差別やトラブルを引き起こさないよう、「誰といつ濃厚接触したことが問題だったのか」は通知されない。
2020.04.26(日)
文=西田 宗千佳