リメイクが難しい
石原軍団の刑事ドラマ
石原軍団伝説のドラマといえば「太陽にほえろ!」と「西部警察」。
「西部警察」――。凶悪犯を捕まえるため車をドッカンドッカンクラッシュさせ、団長がライフルを撃ちまくり、逆に市民を危険に晒すという、熱過ぎる刑事のストーリーだ。残念ながら絶対リメイクできない。時代が許さない。
それに比べ「太陽にほえろ!」は人間ドラマがメインなのでリメイクも続編も可能。実際、七曲署のその後を描いたスペシャルが何度か放送されているようだ。
ウィキペディアで「七曲署捜査一係」を確認しただけでも、ボスは思いきり想定内の舘ひろし、特殊急襲部隊狙撃班なのに、犯人を射殺しPTSDで銃が撃てなくなった過去を持つという、任務と性格が絶望的に合っていない設定の吉田栄作、「デカ長」というなんのヒネリもないニックネームをつけられた石橋蓮司、似顔絵が得意な刑事として黒鉄ヒロシ登場など、方向性として守りに入るか攻めに出るか壮絶な葛藤があっただろう痕跡が窺える。
今の時代これだけの名作の続編を作るなら、制作陣とキャストは想像を絶するプレッシャーと、ネットで火だるまになる覚悟をせねばなるまい。が、私は見たい。
というのも、「下町ロケット」の佃プライドキャスティングにその可能性が輝いていたからだ。
凄みを増した神田正輝には舘ひろしとともに本庁のド偉いさんを演じてもらえれば、それだけでもドラマに厚みが出る。七曲署ボスに阿部寛、若手育成に長けた良い兄貴分、2代目ゴリさんに安田顕はハマる。
あとは「下町ロケット」の設定をそのままいただき、お金にしっかりしている刑事「トノさん」(立川談春)、頭はいいが社会的常識に欠ける一匹狼刑事「オタク」(徳重聡)、熱血で俊足の新人刑事「リクオー」(竹内涼真)、と少々番組はズレてきたが、キャスト陣がほぼスライドできるではないか。
しかし「下町ロケット」はTBS、「太陽にほえろ!」は日本テレビ。局の垣根をどう超えるか……。ああ考えたら夜も寝られなくなっちゃう(by 春日三球・照代)!
ともかく私は結果的に炎上丸焼けになろうが、「七曲署NEO」が見たい。上記のキャスティングに渡哲也御大が意外性溢れる「刑事以上に街の裏側を知る謎の情報屋」、大好きな緒形直人が2代目山さんとして「話は聞いた……」をやってくれれば、どれだけ脚本がオンボロロでも、私は最終話まで必ず見ることを約束する!
「太陽にほえろ!」は殉職シーンが有名だが、この場を借りてラガーこと渡辺徹の殉職シーンの思い出も共有したい。犯人を追って銃弾を浴びエレベーターで倒れ込み、彼の巨体を挟んでドアがガッコンガッコン開閉を繰り返す、というこれ以上なくビッグ・ボディを生かした殉職シーンであった。
ところがその後、同じ演出を私はまさかのハリウッド映画『ディパーテッド』で目にすることになる。ラストシーンでディカプリオが全く同じ死に方をーッ(驚)!
も、もしかして、監督のマーティン・スコセッシは「太陽にほえろ!」のファン? たまたま一緒になっただけの確率が限りなく高いが、想像するのは自由である。
インタビューでもしマーティン・スコセッシにこのことを聞くチャンスが来たら。そして彼から最高の笑顔と「イエス、タイヨウニホエロ・ラブ!」という一言が聞けたなら、私は嬉しさのあまり卒倒するだろう!
2018.12.13(木)
文・撮影=田中 稲
写真=文藝春秋