グレーパーカー問題について考える
そこで掘り起こされたのが、オシャレのチャンネルをもうひとつ増やして、「40歳までにおしゃれになりたい!」という願望だった。
「それまでの私はトンチキ一辺倒で、オシャレのチャンネルは“オモシロ”ひとつしか持っていませんでした。でも、行事やシチュエーションに合わせて、できればあまり苦労することなく、コンサバの“美人見え”チャンネルに切り替えられたらいいな、と。
そう考えたのが36歳のときで、どんなにがんばっても、四季を一巡したくらいではオシャレにはなれないだろう、オモシロとコンサバのチャンネルを自在に切り替えられるようになるには、3、4年はかかるだろうという心づもりが、そのまま『40歳までにオシャレになりたい!』という連載のタイトルになりました(笑)」
真っ先に解決に乗り出したのは、書籍でもトップバッターを飾る、グレーのパーカー問題。
「グレーのパーカーへの依存度はかなり高くて、ジッパーの有り無しなど含め、常時4着以上は持っています。インパクトの強すぎるトンチキボトムスだって、グレーのパーカーさえあればどうにかなる。そんな精神で今まではやってこられたけど、ある日、お気に入りのイチゴ柄のパンツにグレーのパーカーというスタイルでテレビに出たら、視聴者の方に『トミヤマさんどうした? ADみたいな格好してるよ』といわれてしまって……。
自分がもう、10代、20代の頃のようにはグレーのパーカーを着こなせなくなっているんだと気づかされ、打ちのめされた瞬間でした」
手持ちのパーカーたちとお別れするのではなく、延命させるにはどうしたらいいか。これが記念すべき連載第1回のテーマとなったのだが、解決に向けてトミヤマさんがしたことは、大量のファッション誌を買ってくることだった。
「コンサバ系の雑誌を、ちょっと若い子向けから自分よりお姉さん向けのものまで幅広く買ってきて、とにかく、パーカーが載っているページだけをひたすらチェックしました。
そうすると、ある傾向があることに気づかされるんです。
パーカーを1枚で着ている人はいないな、首元からシャツの襟を覗かせていたり、下からカットソーの裾が見えていたり。チラ見せできるように、ジップタイプのものを着ている人が多いし、かぶるタイプのときは必ずチュールのロングスカートはいてるな、というように、ルールが見えてくるんですよ。
これが白シャツだろうとデニムやブレスレットであろうと同じで、ひたすらひとつのアイテムばかり見続ける、というのが最大のポイントです」
2018.07.17(火)
文=今富夕起
撮影=榎本麻美
写真=福本邦洋、岡本拓也
イラスト=澁谷玲子