「けんかをやめて」の衝撃

「17才」というタイトルの曲にハズレなし。南沙織の「17才」も名曲だが、河合奈保子の「17才」も大人と少女の狭間で揺れる心を絶妙に描いた超超名曲!

 奈保子熱が再燃したきっかけ。それは数カ月前テレビ番組で見た「懐かしのVTR」コーナーであった。そこで映し出されていたのは80年代、夏の風物詩だったアイドル水泳大会。若いスター達が水着いっちょでプールの中でワチャワチャしてポロリもあるかもよ的な、今じゃ考えられないあの番組だ。

 そのプールに特設されたステージで、たわわなバストを揺らしながら熱唱するビキニ姿の河合奈保子の姿を見て、私は思わず身を乗り出した。

 「どんなシチュエーションでも、歌はしっかり心を込めて歌います」というたたずまい。水着であそこまで清らかに歌が大好きオーラが出る人っている?

 女神さまや。女神さまがおる……!

 汚れた大人になってからつくづく再確認する奈保子の偉大さよ。いや、彼女のウェッティな歌声自体は昔から好きだったのだ。「ラブレター」や「17才」は特に好きで「ラブレター」は昔ラジオに出演した時、オススメ曲に取り上げさせていただいたこともある。

作者である竹内まりや本人がセルフカバーした「けんかをやめて」が収録されている『REQUEST』。1987年に発売され、ミリオンセラーを記録したこのアルバムでは、中山美穂への提供曲「色・ホワイトブレンド」、薬師丸ひろ子への提供曲「元気を出して」のセルフカバーも聴くことができる。

 逆に彼女を嫌いになったこともある。きっかけは竹内まりや作詞作曲の「けんかをやめて」であった。

 これが上手過ぎた。上手過ぎてイラッ、ムカッ! となってしまったのだ。

 歌を聴いて、自分を取り合ってケンカする男たちの間に入って、「私のために争わないで! 2人とも好きなのよ……」と止めている女のドヤ顔がマザマザと浮かんできたのだ。

 チッキショー、モテてよろしいのうッてなもんである。

 ああ、そうサ。幼かった私は歌の世界と実際の彼女を混同しちまったのサ……。繰り返しになるが、それだけ河合奈保子の歌がうまかったということである。

 そんなスットコドッコイな理由で奈保子離れをした私だが、アッサリと「唇のプライバシー」で引き戻された。こちらも「すごくカッコイイ」というあまりにも単純な理由である。

 いやもう思春期の揺れ揺れファン心理なんてそんなもんだから!

2018.07.24(火)
文・撮影=田中 稲
写真=文藝春秋