自分のペースで頑張れるのがいい

<旅の途中で出会った人>
カレー店オーナーシェフ 川岸真人さん

コースは日替わりでデザートまで含めて5品。この日は〈豆腐とグリーンピースの温かい前菜〉〈いさきのカレー〉〈ラムひき肉カレー〉〈野菜のカレー〉に、8時間かけて低温でじっくり蒸す〈プリン〉とコーヒー。ご飯はすべて県産の「夢しずく」に古代米を混ぜて炊く。〈野菜のカレー〉には鰹節を加えて煮たレンズ豆を添えて。

 「すべてひとりでやっていますから、1日10人分作るのが精いっぱいなんです」。メニューは3,500円(税込)のカレーのコース1本で、完全予約制。川岸真人さんが「カレーのアキンボ」をこの場所に開いたのは2015年の9月、東京の錦糸町で同名のカレー店を5年営業した後、コアなファンに惜しまれながらの移転となった。

古い日本家屋の2階を抜いて天井を高くとるなど、大工の友人と二人で改装した。

 大学卒業後、最初の就職先も飲食店。とにかくスピードが求められた。「あまり器用なほうではないので……ひとりでできることを考え、カレーに行き着いたんです」。川岸さんが作るのは、インド風の創作カレー。素材を活かし、油脂を多用せず、出汁の旨みをきかせているので和食に通じる面もある。そして、カレーの要となるスパイスの使い方は優しく、絶妙。

左:器は信頼を寄せる近所のショップ「RITMUS」で調達。カレーを引き立てるセンスのいいものばかり。
右:お店のトレードマーク。

 「佐賀は特に野菜と魚介の質がよく、ストレスなく手に入るのが魅力です。近所の農家の方に使い方を教えてもらうこともあります」。場所が変わってはじめて、東京では張り詰めていたな、と思うこともあるそうだ。

仕上げに乾燥レモンの皮や山椒の葉を使い、爽やかさをプラス。

 「お客様とコミュニケーションをとりながら、料理の内容をもっとよくしていきたいですね」。東京で叶わなかったことが、ここでなら自分らしく丁寧に実現していけると、静かな自信が滲んでいた。

カレーのアキンボ
所在地 佐賀市大和町川上475
電話番号 不掲載
営業時間 11:00~17:00、18:00~20:00
定休日 日曜
アクセス JR佐賀駅から車で25分
※完全予約制。予約はfacebookから。

川岸真人(かわぎし まさと)
1984年佐賀出身。東京で大学生活を送り、卒業後、飲食店勤務。その傍ら独学でカレー作りを習得し、2010年、東京・錦糸町に「カレーのアキンボ」をオープン。2015年に移住し、完全予約制の当店をスタート。

●協力
さが移住サポートデスク

電話番号 0952-25-7551(佐賀・福岡)/090-1657-8205(東京)
http://www.sagasmile.com/

2017.08.10(木)
Photographs=Yumiko Shimosoyama

CREA 2017年8月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

夏休みと、ごちそう。

CREA 2017年8月号

47都道府県の旅で見つけた
夏休みと、ごちそう。

定価780円