全59棟のリニューアルは
もう完了間近

バリスタイルのパビリオン(あずまや)はラウンジバー。リゾートが断崖の上に位置することがよくわかる。インド洋の眺めはまさに絶景だ。

 かつて、バリ島には、その神秘性と素朴さを愛する旅人たちが訪れていた。それから数十年、この島ほど豪華なリゾートやスパが集中する場所は、世界中のどこにもない。いま、バリ島はリゾートラヴァーたちにとっての楽園なのである。

 インド洋に面したバリ最南端のウルワツ地区に、「ブルガリ リゾート バリ」がその偉容を現してから、2017年で10年の月日が経つ。以来、この地で、並みいる世界ブランドホテルの頂点に君臨しつづけている。

 空港から専用の送迎車で走ること約40分、海抜150メートルの断崖絶壁にリゾートはある。心和む笑顔と、冷たいおしぼり、そしてスペシャル・ドリンクのハーボヒートによるレセプションでの歓迎を受けたら、バギーに乗ってヴィラへと移動だ。

 南国の緑きらめく樹木のあいだを縫って進むと、気分はまるで森林浴なのだが、そこかしこに咲く花々の薫香がふわりと鼻孔をくすぐる。

風格満点のレセプション。到着後、ソファで一息をつく。すでに異界に入り込んだ気分になるが、同時に、ここで数日を過ごすのかというゴージャスな気持ちになってくる。

 リゾートのデザインはアントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィール&パートナーズによるもので、眼下にインド洋を望む59棟のヴィラは豪華極まりない。建築は伝統的なバリスタイルを基調にしているが、モダンなイタリアンスタイルで味つけしてあり、両者の融合は見事としか言いようがない。

 各ヴィラはバリ様式の高い塀で囲まれていて、門扉の木戸をくぐると、広大なリヴィングルームとプライベートプールの空間に迎えられる。この部屋は、屋根はあるが外気に接する半屋外になっている。ゆえに、プライバシーは完全に保たれ、開放感にあふれている。

 ベッドルームを含むメイン棟は、急勾配のかやぶき屋根を戴くパビリオン風。ベッドに横たわると、円錐形の天井に向かって視線が吸い込まれていく。ベッドカバーをはじめ、いたるところにバリスタイルのイカット織やソンケットを用いているところが粋である。

左:モダンな印象だが、随所にバリスタイルが取り入れられていてシックだ。金糸と銀糸を織り込んだベッドカバーのソンケットが美しい。バギーなどを呼ぶ場合には、電話一本でバトラーが対応してくれる。
右:さんさんと日が差し込むバスルーム。もちろんダブルシンクで、アメニティはブルガリ。

 部屋の真ん中にバスタブを配した15畳もあろうかという広いバスルームも快適きわまりない。三方の壁面はすべてガラス窓で、バスにつかりながら、あるいは身づくろいをしながらも木々を感じることができる。シャワーが室内と室外に備え付けられているのも嬉しい。

 一部のヴィラのレストルームでは、蓋が自動的に開閉する最新式のウォシュレット仕様になっているのは、バリ島では稀有なことだ。また2017年末までには、全棟に装備される。

 開業から10年を迎え、営業をつづけながら区域を分割して工事し、59棟全棟の改装も着々と進んでいる。改装といっても生半可なものではない。骨組だけを残して完全に解体し、ほぼ一から作り直すのである。2017年秋にはすべての改装が終了する予定だ。

2017.06.21(水)
文=文藝春秋 増刊・ムック編集部