「フランス菓子」をユネスコの世界遺産に登録したい

――フレデリック・カッセル​の展開は、フォンテーヌブローを拠点に、地域に根ざしながら世界へと広がっていますね。

 日本をはじめ世界に広がっていますが、自分から積極的に展開したというよりも、お声がけをいただいたとき、それにお応えできるかどうかを考えてきた、という感覚なんです。

――日本にはそのおいしさに多くのファンがついていますが、海外での反応は?

 実は先日、仕事でモロッコへ行って、ケーキを試作したんですね。それを皆さんに味わっていただいたところ、会場がしーんと静まり返って、誰も何も言わないので「何か問題があったのだろうか」と理由をたずねたんです。すると「おいしすぎて、言葉が出なかった」と。

――確かに人は、本当においしいと言葉を失うことがありますね……。そんなモロッコにお店をオープンされたそうですね。

 そうなんです。実はモロッコの国王が、私のケーキをとても気に入ってくださっていて、首都ラバトに招いてくださいました。(写真を見せながら)モロッコのお店は、こちらです。

――サロン・ド・テが広く、美しいお店ですね!

 Dar Essalam Market(マルシェ・ダル・エッサラム)という、複合施設の中にあります。フォンテーヌブローの本店が、そのままモロッコに移ったような雰囲気で、バゲットのサンドイッチをはじめ、サレも豊富です。モロッコには、今後も店舗がオープンする予定です。

――世界中にファンがいるカッセルさん。お菓子作りで特に大切にしていることは何でしょうか。

 素材、食感、層の作り方、そして組み立てです。そして最終的に行き着くのは、やはり「味」。たとえばチョコレートは長年、ヴァローナ社のものを使っています。その影響もあってか、私の舌は、複雑な風味や酸味、そして余韻を求める傾向があります。良い素材選びはやはり重要です。

――これからの展望について教えてください。

 これからも変わらない私のヴィジョンは、フランス菓子の守り手であること。つまり、フランス菓子への貢献です。現在、フランス菓子を守り続けるために、ローラン・ル・ダニエル、ピエール・エルメ、そして私の3人で、「フランス菓子」をユネスコの無形文化遺産に登録するための申請を進めています。4年かけて準備し、先週ようやく提出しました。実際に登録されるまでには10年ほどかかるかもしれません。

 それから、やっぱり私はエンジェルなんです(笑)。根幹にあるのは、お菓子やチョコレートを作る喜びと、それをお届けする喜び、味わって喜んでいただくこと。そのすべてが揃って、はじめてパーフェクトなしあわせの輪が完成するのだと思います。

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