「これもう年越しちゃったんじゃない?」
「冬の海とか死ぬほど寒いだろ」
「でもさ、夜の国道ってガラガラだし、ちょっとスピード出したら気持ちいいんじゃない?」
「またそれかよ。俺の車、親父のカローラだって何回も言ってるだろ。そんなスピード出したらガタガタ言って、年越し前に死んじまうっての」
「まあ、どこでもいいやぁ~。どっかであったかい年越し蕎麦が食えれば俺はなんでもいいぜ~」
後部座席であくびをするKさん。
「とりあえず適当に国道走ればどっかに蕎麦屋あるだろ」
助手席のOさんの一言で車はようやく動き始めました。
付けっ放しにしていたカーラジオから流れる、人気女性歌手のバラード。
その歌詞を口元で諳んじながら、車は夜の闇に消えていったのです。
深夜の国道は本当に空いていて、街外れに出るころには対向車すらほとんど見かけなくなっていました。
「ウチの親なんかもう寝てるだろうな。紅白終わったらすぐ寝るんだぜ」
「アタシのおばあちゃんは除夜の鐘行くって言ってたなぁ。寒いのに元気だよねぇ」
「飲んだくれのお前より全然長生きしそうだよなぁ~」
「ひどぉ~!」
会話は弾み、車内には笑いが溢れました。
ふと、後部座席のMさんが運転席の方に顔を出しながら、メーター横の時計を見て言いました。
「ねぇ~。これもう年越しちゃったんじゃない?」
「え! マジで!?」










