その方は長い間日本で働いていた中国人で、一時母国に帰りしばらくぶりに日本に戻ってきたという。「日本に戻ってきて一番食べたいものが立ち食いそばで、しかもかき揚げが好きなので作ってほしい」と懇願された。それで作って出したところすごくうまいと大喜びされて、以来、天ぷらを追加することを決めたという。
籾山さんは食のプロだ。それを機に探求心に火がついて、どうせやるなら面白いことをしようと料理の創作を開始したというのだ。そして、それが人気となり、朝だけでなく昼もそば屋として営業するようになったというわけである。
「10分かかるナス天そば」が到着
そんな話をしていたら「10分かかるナス天そば」が完成した。その姿をみてテンションが爆上がりである。
使用しているナスは長茄子。皮をむいて、身の部分だけを適度な大きさにカットして揚げている。それが5個。ナスの皮はまとめてかき揚げにしてこれもじっくり火が通るように揚げている。
まずつゆをひとくち。昆布粉、節粉、煮干粉など4種類を使った出汁のよく効いたうまいつゆである。細めのそばはむらめん謹製の冷凍麺を使用しており、コシもありよい具合だ。
まず、ナスの身だけの天ぷらにかぶりつく。熱いっ。コロモは香ばしく身はトロトロだ。これはうまいぞ。たまらない。
さらに、ナスの皮のかき揚げをつまんで食べてみると、軽くてサクッとしていて最高の揚げ具合だ。ナスの皮がこんなにうまいのかと目を見張る。かつて食べた水道橋の「とんがらし」とはまた別のうまさが襲ってきた。どんぶりに集中してあっという間に食べてしまった。
そこで、もう一度メニュー表を見渡し、「タコあたま天そば」を追加注文することにした。するとまた「これから揚げますから、少しお待ちくださいね。うちは時間のかかる立ち食いそば屋なもんで!」とまたまたニッコリ切り返してきた。籾山店主、なかなかやるな。
