そんな両親にどう接すればいいのか。ケアマネさんとも相談して、まずは親のこれまでの人生を徹底的に肯定しました。「お母さんのご飯、本当に美味しくて大好きだった。あんなにたくさん作ってくれたんだから、もう十分だよ」と何度も何度も、事あるごとに語りかけるようにしたんです。

 父には「お父さんに海やプールにたくさん連れて行ってもらってうれしかった。自慢のお父さんだよ」と、これまたご真言のように伝え続けました。

ケアマネさんとの適切な距離感

――ケアマネさんのサポートは重要ですね。ケアマネさんと上手に付き合っていく秘訣もあれば教えてください。

上大岡 本当に幸運なことなのですが、担当のケアマネさんがすごく馬が合う方だったんです。振り返ると、いい関係性を構築できたのは、ほどよい距離感を保っていたからだと思います。連絡は事務所を通してのみ。メールも使わず、事務所の電話か対面で話をするスタイルでした。

――万が一のときも連絡は取れないということですか?

上大岡 そうです。24時間対応の在宅看護も利用していたので、どうしても、というときはそちらを頼らせてもらいました。

――なるほど。

上大岡 ただ、介護を終えた後は、携帯番号もメールアドレスも教えていただき、親しくお付き合いさせてもらっています。本書の感想もメールで送っていただき、うれしく読ませていただきました。

施設を選ぶときの要チェックポイントは

――ご両親の入居先を選ぶにあたり、気を付けた点は何ですか?

上大岡 立地と構造ですね。かなり入念にチェックしました。

――上大岡さんは一級建築士の資格をお持ちで、3歳上のお姉さまは地震学者として大学で教鞭をとられています。やはり施設の「立地」「構造」は要チェックポイントなんですね。

上大岡 立地は「災害に強いかどうか」という観点です。たまに、「海が一望できるベストロケーション」などと紹介されている施設もありますが、地震が起きたときの津波が心配というデメリットがありますよね。水害に遭わないか、道路寸断などで孤立するエリアではないかなど、細かく確認しました。構造については、施設の建物が耐震構造なのか免震構造なのかという点をチェックしました。

 それから、自家発電設備があるかどうか。両親が入居した老人ホームは、免震構造で、ここなら安心だろうと決めました。

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