新たなサイクルは「若さ」と「挑戦」

 生涯の願いだった『フランケンシュタイン』を、デル・トロは「ひとつのサイクルの頂点」と呼ぶ。次の目標を尋ねると、「映画を完成させたばかりなので、今はまだぼんやりしています」と答えた。

 もちろん、創作者としての意欲は衰えを知らない。以前、巨匠デヴィッド・クローネンバーグ監督から「自分を怖がらせることができればアクティブになれる。慣れたことを繰り返すと老いてしまうが、新しいことに取り組めば若返る」と言われたことを覚えているそうだ。

デル・トロ 私はこれから、まだ試したことのない領域に踏み出したいのです。これまでは怖くてやらなかった、新しいスタイルの撮影や美学に挑戦してみたい。若さとは“確信”と“恐怖”が混じりあっていることで、それこそが強み。私もそうでありたいと思います。

 新人に回帰するような熱意をにじませるデル・トロに、『フランケンシュタイン』になぞらえて「なぜ人間は“若さ”や不老不死を求めるのでしょう?」と聞くと、まんまるなお腹をぽんと叩き、「私を見てくださいよ、欲求の化身でしょう」と笑みを浮かべた。

デル・トロ 日本に来たらお寿司を食べたい、しゃぶしゃぶやすき焼きを食べたい……そういう欲求は欠陥でもあります。ものごとを“量”ではなく“質”で考えられるのが真の知性ですが、賢くなることは難しい。我々は哺乳類の恒温動物として、より多くを求めるようにできています。より多くの領土や食糧、休息を欲しがる生き物なのです。

 もっとも、デル・トロ自身は不老不死をまるで求めていない。「いずれ死ぬという運命があることは良いものです。私は死ぬべき時に死にたい」と言い切る。

デル・トロ 死ぬのが明日であれ、明後日であれ、私はその時が来れば満足ですし、それは祝福だと思います。映画でも描いたように、生きているうちは“生きる”以外の選択肢がない。そのことが人生をより大切に、より面白くしてくれるのです。

 そしてあっけらかんと、「人生を無限に延ばすことや、ものごとが永遠に変わらないことを望むのは、極端な若者か老人、そして愚か者だけでしょう」と笑った。「私は変化を好みます。良い日があれば最低の日もあり、負けることも勝つこともあるのが良い。それ自体がとても素敵なことだと思うから」。

『フランケンシュタイン』
 

STORY
天才だが傲慢な科学者ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)が禁断の実験によって生み出したのは怪物だった。やがて、ヴィクターと悲劇を背負った怪物は破滅への道をたどることに――。
 

STAFF&CAST
監督:ギレルモ・デル・トロ/出演:オスカー・アイザック、ジェイコブ・エロルディ、ミア・ゴス、クリストフ・ワルツ/2025年/アメリカ/149分/Netflix映画『フランケンシュタイン』一部劇場にて10月24日(金)より公開/11月7日(金)より世界独占配信