この記事の連載
◆3位『邪神の弁当屋さん』イシコ/講談社

相棒のニワトリに荷車を引かせ、広場で日替わり弁当を売るレイニー。ていねいに作られた弁当はなかなかの人気です。この国の大臣であるライラックも彼女の弁当のファンになり、日参するように……。
ほのぼのストーリーに思えますが、じつはレイニーの正体は死と実りを司る邪神なのでした。よその国で戦争を引き起こした罰として人間となり、今は一日一善をモットーに生きています。物語が進むにつれ明かされる、レイニーが弁当屋になった経緯、彼女の深い哀しみが胸を打つ。
ポップで洗練されたかわいらしい絵柄ですが、ときおり世界のダークサイドをのぞかせる迫力にゾクッとさせられます。漫画だからこそ表現できる、唯一無二の語り口を持ったファンタジーです。

◆静かな夜に、自分ではどうしようない、どうすることも出来ない世界に思いを馳せるキッカケになるような作品。(ミックスグリーン代表取締役/林 士平さん)
◆可愛い絵柄に絵本のような読み味を想像していたら、ピリッとするセリフ回しとちらつく不穏なストーリーに惹きこまれます……!(「OUR FEEL」編集長、「FEEL YOUNG」デスク/神成明音さん)
◆極めて簡素な筆致で、でも底知れぬ謎がそこにはあるという、多くの漫画が目指す「間口は広く、奥は深い」作品の理想型の一つ。(ミキサー編集室 編集長/豊田夢太郎さん)
2025.10.15(水)
文=粟生こずえ
写真=平松市聖