【WOMAN】
あきらめていた人生がラジオの「声」で動き出す

 〈「人が描かないような人を主人公にしたい」といつも思いながら漫画を描いています〉(1巻あとがきより)。東京の下町で、ボケ気味の母と2人暮らしをしている45歳の片岡たかこは、化粧もせず白髪まじりの頭で社員食堂のパートに出掛ける。愛情を注ぐ一人娘は、別れた旦那のもとにいる。言いたいこと、したいことを飲み込んで過ごす毎日だ。ある日偶然耳にした深夜ラジオで、若手バンドのボーカル・谷在家光一の「声」に、不器用だけれど誠実な言葉に恋をする。〈なんでこんなになぐさめてくれるの?〉。共感が、行動力に変わる。〈生きたいよーに生きる〉。

 思春期をこじらせ、いまだ反抗期にいるたかこさんにとって大事なことは、「声」を出すことだったのだ。ひび割れて震えてしまってもいい、自分の思いを、自分の言葉と声で、周りに伝えること。ひとりの変化は、周りにいる人々をも変化させていく。うん、これは「革命」を描いた漫画だ。

『たそがれたかこ』(既刊1~6巻) 入江喜和

人生を半分あきらめ「たそがれ」ていた45歳のたかこさんが、深夜ラジオをきっかけにもう一度、本当の、青春を始める。第5巻でついに、恋をした「声」の持ち主・谷在家くんのバンドのライブに足を運ぶ。音と空気を絵で表現したライブシーンは、圧巻。『BELOVE』連載中。
講談社 各580円
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2016.01.05(火)
文=吉田大助

CREA 2016年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

冬にしたいふだんのこと、と映画

CREA 2016年1月号

冬にしたいふだんのこと、と映画

定価780円