ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!

インドネシアのジャワ島にあるボロブドゥール遺跡にて。朝日に照らされた釈迦像は神々しいほどの美しさだった。遺跡は9層の段台ピラミッドになっていて、そのうちの下部6層が方形、上部3層は円形になっている。上部の円壇には72体の釈迦如来像が並ぶ。本来はすべてストゥーパ(仏塔)で覆われているものが、4体のみオープンになっていて、その姿を見ることができる。(撮影=たかせ藍沙)

リゾートの随所にちりばめられた感動!

スロープの途中で車が止まった。あと少しなのになぜ?

 ファーストクラスで世界一周の旅の、最後の滞在先は「アマンジウォ」に決めた。私が大好きなアマンが経営するリゾートのなかでも、ロケーション、建築がひときわドラマチックで、写真を見るたびに「いつか行きたい!」と思っていたのだ。

正面に3キロメートル先のボロブドゥール遺跡が見えた!

 ジャワ島にあるインドネシアの首都ジャカルタから、国内線のフライトで1時間15分。ジョグジャカルタの空港で小型機を降りると、すぐに専用のラウンジに案内された。自分で荷物をピックアップする必要はない。スーツケースが積まれ、準備が整ったところで迎えの車に案内された。

 アマンホスピタリティに迎えられて約1時間、細い未舗装の坂道を上ってから、正面エントランス前の坂を下りる。その坂の中腹でドライバーさんが車を止めた。不思議に思っていると、「あれがボロブドゥール遺跡です」と、前を指さした。

 「えっ!?」と、その指し示す先を見ると、小さな長方形の窓のようなものが見えた。その中央に、3キロメートル先の、ストゥーパ(仏塔)を載せたボロブドゥール遺跡が見える。「なんてドラマチックなアプローチ!」。建築家の才能に痺れた。

メイン棟の中央を抜け、反対側に出ると、正面の石柱の間からボロブドゥール遺跡が見える。

 車寄せに着いた後はフラワーシャワーでのウェルカムサービス。奥まで進むと、先ほど小さく見えた長方形の窓が、建物全体を囲む大きな角柱で縁取られていたことを知り、更に感動!

レストランスタッフは民族衣装風のユニフォーム。笑顔が輝いていた。

 「アマンジウォ」は、いくつものアマンを手がけている建築家、エド・タートル氏のデザイン。建物はすべて地元の石灰石を使っている。メイン棟は、ボロブドゥール遺跡と同様の、四角い土台の上に円形の建物。そして屋根の上にはストゥーパ(仏塔)を模したというドーム型の飾りが載っている。

 チェックインは客室で。メイン棟の外側の円周上に並ぶ35棟の客室棟とその外側にある1棟のダレムジウォスイートはすべて一戸独立型で、こちらもメイン棟と同じ石灰石で造られている。高い天井と4本の石柱に守られたキングサイズベッド、石灰石の屋外バスタブ、そして、中庭にはカバナ、客室によってはプライベートプールがある。

メイン棟の外観。ライトアップされた寺院のように神々しい。
客室も石灰石で造られていて、ベッドの周りにも石灰石の角柱がある。
メインプールのプールサイドにある、円柱形にカットされた木がユニーク。

 斜面を降りた先にあるメインプールのそのまた先には水田が広がり、村の中のある寺院にいるような、澄んだ空気感が清々しい。敷地内の随所から、朝に、夕に、ボロブドゥール遺跡を眺めることができる造りになっている。

早朝、アマンジウォから見えたボロブドゥール遺跡は、朝もやに浮かんでいた。日中は緑に縁取られ、夕方になれば朱色に染まる空にシルエットを際立たせる。

2015.09.25(金)
文・撮影=たかせ藍沙