自分の意志と現実のギャップが見えた10年

――「チェイス」のほか、「オトコマエ!」などNHKドラマに出る一方、個性派の監督の映画にも出演されていますが、そのあたりのスタンスについても教えてください。

 僕は基本的に依頼をいただいて、スケジュール以外のことではお断りしたことがないんですよ。ただ、出会うタイミングは、全部必然だなと実感しています。いろんな作品に参加したい欲望はあるんですが、今の位置がちょうどいいんです(笑)。外を歩いていても、みんなが知っているタイプじゃない。でも、これが役者としてストロングポイントにもなる。作品を見たときに、あいつはあの作品に出ていて、あの役をやっていて、プライベートはこんな感じだ、と知られているのは役者にとってアドバンテージじゃないと思うから。

――それでは、現状にはかなり満足されているということで?

 映画に魅せられて、この世界に入ったものの、数年前までは色々なアルバイトをしていたんですよ。それが、なんとなくかたちになってきたことは有難いことです。でも、バイトしていた時期も、それはスゴく大事な時間だったと思うんですよ。腐る原因はいっぱいあったんですが、そこでなんとか辞めずにやってくることができた。その頃があったから、今、風当たりが強くても、振り落とされない自信はありますね。それにこの10年で、自分の意志と現実のギャップがハッキリ見えたし、それに屈することが決してマイナスじゃなくて、そこを通ったことで、届けられたりすることもあるということに気づかされました。

――ちなみに、ギャップというのは、サブカルチャー好きにもかかわらず、どうしてもルックスが先行したイケメン枠として捉えられてしまうことですか?

 確かに、エッジの効いたサブカルなものが好きという本質の部分と、自分が俳優として与えられる枠は明らかに違いましたし、違和感もありました。でも、そんななか次第に、プライベートで内面的に気の合う連中と集まるようになって、役者ではない自分の居場所ができたんです。だけど逆にそうなったとき、今度は役者として、どうしたら自分の本質と近い場所に身を置けるのか、と思いました。でも、それは自分のエゴでしかないんですよ。自分が活かされる場所は、自分では決められないわけで、むしろ監督やクリエイターの人に選んでもらうしかない。つまり、「役者とは自分の意志じゃない、仕事だ」と分かったんです。自分はこうなりたい、という鉄のような意志も必要ですが、それより自分のことがちゃんと客観的に見えてないといけないんですよね。

2011.11.04(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Asami Enomoto
styling:Kazuyo Koiso
hair&make-up:Shinji Hashimoto(atelier ism(R))