前回、前々回と、宿泊もできる魅力的なシャトーとワインを紹介しましたが、今回は独自の路線や、新たな挑戦を感じさせてくれるシャトーをいくつか紹介したいと思います。

しっかりと果実味があり飲みごたえのあるロゼ

10ヘクタールの葡萄畑を持つシャトー ドゥ ベル。このあたりの平均的な葡萄畑の広さは約20ヘクタールというから、小さなシャトーであることがわかる。

 まずは、シャトー ドゥ ベル。

 家族経営のシャトーはドルドーニュ河のほとりにあります。引き潮になり、河の水位が下がった時には、向かい側にあるサンテミリオンまで(胸までつかりながら)渡れるとか! オーナーであるオリヴィエ・カゼナーヴ氏は、「ボルドーの力強さとブルゴーニュのエレガンスを兼ね備えたワイン」を作りたいといいます。飲んだ人から「ボルドーっぽくない」と表現されることも多いのは、そのあたりに理由がありそう。

わが道を行く、シャトー ドゥ ベルのオリヴィエ・カゼナーヴ氏。後ろに見えるのがドルドーニュ河。

 透明感のある赤ワイン「エシャップ ベル」は、「軽めのボルドー」を作ろうと試みたワイン。今、ボルドーで人気のロゼワインに関しては「プールみたいなロゼはいやだ」とユニークな表現。流行っているスタイルは、水のようにすいすい飲めるロゼワインだそうですが、そうはしたくないという気持ちが込められていて、しっかりと果実味があり飲みごたえのある味に仕上がっています。

一番左に見えるのが、カベルネフラン3年分をブレンドしたワイン。AOCボルドーは名乗れないが、興味深い。ボトルもボルドーらしくない。

 AOCボルドーにはなりませんが、カベルネフランというブドウ品種を3年分ブレンドしたユニークな赤ワインを作ってみたり、ボルドーでは栽培する人の少ない白ブドウ品種、シュナンブランを2年前に植え始めたりも。「市場を見ずに自分のやりたいことをやっている」。一度飲んでみると、そんな言葉に納得することができます。

Château de Bel (シャトー ドゥ ベル)
所在地 Malbatit 33500 Arveyres
電話番号 +33-6-63-09-75-82
URL http://www.chateaudebel.com/Chateau_de_Bel/

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2014.10.01(水)
文・撮影=浅妻千映子