《モナ・リザ》のアウトプット鑑賞にトライ!

 お疲れさまでした! ここで、ほかのみなさんのアウトプットも見てみましょう。「どんな“コツ”を使っているか?」にも注目してみてくださいね。

「優しそうな人」
「位の高い人だと思う。風格を感じるから」
「髪がチリチリで、少し赤毛」
「意外と髪が短い」
「唇や肌の血色が悪い」
「すっぴん? 眉毛がない」
「よく見ると女性らしい手がかりがあまりないような」
「男性だと思ったほうが自然かも……」A

「けっこう厚着」
「袖はベロア素材? 柔らかそう」
「気温は少し肌寒い」B

「背景の右上に白い氷山を発見」
「道が赤い。溶岩が流れているみたい」
「曇り空なのに、水が真っ青」
「私がモデルだったら、後ろを振り返りたい」C

「すごく高い塔のベランダにいる?」
「手前にひじ掛けがあるから、イスに座っていると思う」
「じつはモデルの隣には、ほかの人が座っているのかも」D

「よく見ると細かいヒビがたくさん入っている」
「爪で剝がしてみたくなる」E

「クリームパンみたいに肌がふわふわ」
「肌や手にシワが全然ないし、鎖骨が見えない」
「目の黒目にハイライトがない」
「リアルだと思っていたけど、『ない』ものが多くて現実の人ではないみたい」

「数」より「広さ」自由な鑑賞の本当の面白さ

 できるだけたくさん書き出すことを目標としていましたが、いかがだったでしょうか? 「しっかり20個書けました!」という人は、作品からたくさんのことを受け止めた証拠ですね。すばらしい!

 「いざ自分だけでやってみると、なかなかうまくいかなかった……」という人も、2つ3つでもアウトプットできていればもちろんOKです。

 いつもは作品を素通りしてほとんど感じられていなかったのが、あえて立ち止まってなにかをアウトプットしたというだけでも、かなり大きな変化だと思いませんか? この本を読みはじめる前と比べれば、その人の「感性の扉」は確実に開きはじめているはずです。

 一方で、意見はたくさん出せたものの、どこか物足りなさを感じている人もいるかもしれません。

 とくに、ふだんから明確な「結論」を出したり、客観的な「正解」を得たりすることに慣れている人は、やはりどうしても手応えがなく「これでいいのかな……」という気持ちになるのではないかと思います。

 まず大前提として、アウトプット鑑賞では「意見の質」を気にする必要はありません。そこには正解があるわけではありませんし、最終的に1つの結論にまとめ上げることが目的でもないのです。

 しかし、どうしても「うまくいっているかどうか」が気になるという人もいるでしょう。

 そんなときは「どれだけたくさんアウトプットの数を出せたか?」だけではなく、「どれだけものの見方を増やせたか?」に注目するのをおすすめします。

 たとえ「多数のアウトプット」を出せたとしても、その根底にあるのがたった1つのものの見方だとしたら、それは「多様なアウトプット」だとは言えません。「ものの見方が増えているか?(=意見の多様さ)」に注目することで、鑑賞が一段と面白くなりますよ!

 例として、さきほどのみなさんのアウトプットのうち、アルファベットが振ってある5つ(A~E)に注目してみてください。

 Aの「男性だと思ったほうが自然かも……」というアウトプットは、もとは「女性だ」と思い込んでいたところから「男性かも」と捉え方の可能性が増えていますね。

 Bの「気温は少し肌寒い」は、「視覚」だけでなく「触覚」も駆使されているようです。

 1つ飛ばしてDの「じつはモデルの隣には、ほかの人が座っているのかも」というのは、「描かれた部分」から、「キャンバスの外側」へと視点が広がっています。

 これらはいずれも「ものの見方の数」が増えた例です。

 なお、「ものの見方」を広げるための“コツ”は、本書で触れてきた「五感を駆使すること」や「想像を広げること」だけではありません。

 みなさんのアウトプットにも、それらにとどまらない多様な視点が確認できますよ。

 たとえばCの「私がモデルだったら、後ろを振り返りたい」は、新たな視点です。つまり、この人は「鑑賞者」として作品を眺めるのではなく、自分自身が「絵のモデル」に変身したつもりで感じたことをアウトプットしていますよね。

 このように「登場人物」になって作品に入り込んだり、はたまた「作者」になってみたりと、立場を変えて鑑賞することもできそうです。

 さらに目を留めたいのが、Eの「爪で剝がしてみたくなる」というアウトプットです。きっと作品に顔を近づけて見てみたのでしょう。キャンバスにこびりついた「絵の具そのもの」に目が留まったわけですから、描かれた人物や風景を鑑賞していたときとの違いは歴然としています。

 このように、作品に思いっきり近づいたり、遠く離れたり、逆さまにしてみたり、また美術館で見る場合には作品を取り巻く空間にも目を向けたりと、物理的な視点を変えるのも面白いでしょう。

 あなたが書き出したアウトプットを見返してみましょう。

 そして、「これは『ものの見方』自体がほかと異なっているぞ」と思うものに丸をつけてみてください。

 あなたはいくつ、「ものの見方」を広げることができていましたか?

末永幸歩(すえなが・ゆきほ)

アート教育実践家・アーティスト。中学・高校の美術教師として教壇に立つなかで、「絵を描く・ものをつくる」「美術史の知識を得る」ことに偏重しがちな美術教育に問題意識を抱く。以来、アートを通して「自分なりのものの見方」を育み、「自分だけの答え」を探究することに力点を置いた授業実践を行う。2020年に独立。全国の学校で出張授業を展開するほか、企業・団体への講演やワークショップなど、大人に向けたアートの授業を実施。2026年現在、娘とともにマルタ在住。

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