2025年、日本におけるクマによる人身事故の被害者は238人、そのうち13人が死亡。いずれも統計開始以来、最悪の数字だといいます。ここでは、迫りくる獣害の実態とそれに立ち向かうハンターたちの死闘を描いた『羆(ヒグマ)を撃つ』(伊藤秀倫 著、文藝春秋)を一部抜粋して紹介します。
不幸にして、クマと出会ってしまった場合、どうすればいいのか。「生死を分けるポイント」を、クマ外傷に詳しい中永士師明(なかえはじめ)医師(秋田大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学講座教授)に聞きました。(全2回の後篇/最初から読む)
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クマに出会ってしまったら、どうすればいいのか。
全国でクマの出没が相次ぐ昨今、しばしばその対処法が話題になる。
一般的には「クマから目をそらさず、背中を見せないようにゆっくりと後ずさりしながら、その場を離れる」ことが推奨されている。
目をそらしたり、背中を見せた瞬間、クマは襲ってくるからだ。
ほとんどは不意打ちの攻撃
中永医師らが担当したクマに襲われた患者たちの場合はどうだったのだろうか。
「それが後ずさりする間もないというか、『ヤブの中から突然クマが飛び出してきて』というようなケースがほとんどでした。中には自転車に乗っているときにクマに襲われたけど、襲われたときの記憶がまったくないという人もいました」
これには正直、驚いた。そもそも普通、クマというものは人間の存在を感知したら、これを避けるように行動するとされている。もし避けられずに人間と遭遇してしまった場合でも、攻撃に移る前に警戒・威嚇というフェーズがあるものだ。
そのフェーズを経ずにいきなり攻撃してくるクマが増えているのだろうか。
