「Aなら、さっき『地下に行く』って言っていたよ」

 すっかり意気消沈してしまったBさんたちは、来た道を引き返して廃旅館を後にすることに決めました。

 行きに楽しげに交わしていた会話は鳴りを潜め、今や一同の間に漂うのは居心地の悪い沈黙だけ。

 その沈黙に耐えかねたBさんが口を開こうとして、すぐ後ろを歩くメンバーの方を振り返った、そのときでした――。

 メンバーの1人だったAさんという男性の姿がないことに気がついたのです。

 一同が口々に焦りと憶測を漏らす最中、不意に先ほど紙を拾ったEさんがこんなことを言い始めました。

「Aなら、さっき『地下に行く』って言っていたよ」

 その予期せぬ言葉に固まってしまったBさんでしたが、むらむらと怒りが湧き上がり、思わずEさんにつかみかかりました。

「は? お前、Aのこと見てたの?」

「…………」

「おい、黙ってないでなんか言えよ!」

「ちょ、ちょっと待って……俺、今……なんで……」

「え……?」

「なんで、Aが地下に行ったなんて言ったんだ……。お、俺さ、Aがそんなこと言った記憶ないんだけど……」

 突然消えたAさん。不意にEさんの口をついて出た不可解な言動。

 矢継ぎ早に起きる異常事態に、メンバーの何人かは激しく取り乱して泣き始め、一同は完全にパニックに陥ってしまいました。

 ですが、彼らに降りかかる説明不能な怪奇現象はこれだけでは終わりませんでした。

» (後篇に続く)

次の記事に続く 【終わらない戦慄の余韻】「息子はそういう役割だったので...