Oさんが大家と交わした“決まり事”

 GWが終わり、お盆休みに向かって夏の暑さと湿気が日常に流れ込み始めた頃、Fさんは久しぶりに大学でOさんと顔を合わせました。

「へぇー、じゃあOは実家戻らずに、ずっとあのボロアパートにいたんだ」

「失礼だなぁ~。そうですよ」

 ジュースを飲みながらベンチで雑談する中で、ふとFさんは新歓飲み会のときに聞きそびれていたことを、冗談めかして聞いてみることにしました。

「というかさ、ズバリお前の家ってお化けとか出たりしないの~?」

 もともとオカルトめいた話には少なからず興味があったというFさん。

「う~ん、お化けじゃないんですけど……」

 妙に含みのあるOさんの言葉。

「え、マジになんかあるの?」

「ちょっと面倒臭い決まりごとはありますね」

 思いがけず飛び出してきた話に、冷静にジュースを飲むふりをしていたFさんは内心興味津々でした。

「何その決まりごとって」

「あのー、クローゼットを開けなきゃいけないんですよ、アカちゃんのために」

「あ、赤ちゃん!?」

「いやいや、俺の赤ん坊って意味じゃないですよ。てか、人形ですから」

「……は?」

「“アカちゃん”という名前の人形で、年齢的にはいくつなんだろう……考えてみるとわからないなぁ……」

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