その日はそのまま帰路につき…
「おら! 見ろ、この軸足の抜き方! 全盛期のブラジル10番並みだろ!」
「そのまま無回転決められたら褒められるんだけどなぁ~。それは無理だもんな~」
「余裕だろ。営業で培った体幹舐めんなよ、マジで」
「無理すんなって~」
人数的に1人あぶれたUさんは、休憩がてらタバコを吹かしつつ、時折ヤジを入れながらスマホのカメラで彼らをカシャカシャと撮影していました。
その日は、そのまま何事もなく帰路に着いたそうです。
「で、家帰ってからその時撮った写真見返していたんすけど――」
急にわざとらしく声のトーンを下げたUさん。
「おい、Hさん関係ないんだから~」
「俺たちがボール蹴っている後ろの校舎の窓、多分、職員室の入り口辺りにね、人が立っていたんすよ」
「え……!」
「ビビるっしょ!? でも、怖いのはここから。その人影が両手を前に突き出して、お姫様抱っこみたいに、なんかボロボロの布の塊みたいなの持ってんのよ! ほらこれ――」
おもむろにスマホを取り出すUさん。
「いや、いいですって、そういうのは!」
「ちょっと見てみって!」
嫌がるHさんにグイグイと画面を近づけるUさん。
さっさと見たことにしてこの話を切り上げようと考えたHさんは、薄目でパッと見るふりをすると「見た、見た! もういいってほんと!」と早口で言いながらUさんから体を離しました。
「あはは! マジビビりしてるじゃん!」
