vol.6_TOM FORD BEAUTY
極上のラグジュアリーを
コスメティックに具現化
左の深紅のボトルは世界的にヒットしているスパイシーフローラル“ジャスミン ルージュ”。ブルーのボトル3本は、日本でNo.1人気の“ネロリ・ポルトフィーノ”(右)、8/1発売のレモンのカクテルのような香り“マンダリーノ ディ アマルフィ”(中央)と潮風をイメージした“コスタ アジューラ”(左)。下のボトルはサンダルウッドと東洋のスパイスが溶け合う“サンタル ブラッシュ”。各50ml 25,000円/トム フォード ビューティ
“ファッション”と“ビューティ”は切っても切れない関係。多くのファッションデザイナーがコスメを手掛けるのも自分の感性や世界観を表現したい想いがあるからで、こだわりが強いぶん時に素晴らしい名品が生まれたりする。今気になるブランドといえば“トム フォード ビューティ”だ。グッチのデザイナーとしてその名を知らしめ、従来の“ラグジュアリー”の定義を変えたとも言われるトム フォード氏。
「ビューティとは知性。だから、あなたがどんなに素敵な女性であるかを最高に美しくなることでアピールしよう」。こんな想いを詰め込んで誕生したコスメブランドである。雄弁なクリエイターはビューティにおいてもさまざまなメッセージを発信している。今回は彼の言葉を織り交ぜながら“ブランド魂”に迫りたいと思う。
日本第1号店となるショップが阪急うめだ本店にオープンしたのは2012年10月。重厚なマホガニーが目を惹く高級ブティックみたいな空間、オブジェのように並ぶボトルやパッケージ、意表をつく色の組み合わせ。すべてが“独特な”ラグジュアリー感を放っていた。「メイクアップ、スキンケア、フレグランスは、女性にとって自分の魅力を最大限にアピールすることができるパワフルな変身ツール」との考えからフルコレクションが登場。「スキンケアは素肌に纏うランジェリーのようなもの。その上に重ねるベースメイクは完璧な肌に仕上げるアウター、メイクアップは個性と美しさを際立たせるアクセサリー。そして、香りはあなたそのもの!」。ラインナップを“美のワードローブ”に例えるセンスはさすが。なかでも彼が情熱を注ぐのがフレグランス。これが今、ちょっと話題なのだ。
重ねて無限の香り遊びができる
“プライベート ブレンド”
上の写真を見てわかった人もいるはず。“プライベート ブレンド コレクション”、そのボトルの美しさ、ほかにはない香りがネットやクチコミで広がり、注目を集めている。特に若い世代に評判で、25,000円(50ml)という価格にも拘らず2本3本と買っていく人や男性のファンも多いらしい。
「プライベート ブレンドは僕自身の“香りの実験室”なんだ。従来の香調のしきたりにとらわれることなく、自由に、とても特別でオリジナリティあふれる香りを創ることに専念した。フレグランスに精通した人を思い描いてデザインしたとも言えるね」
洋服をデザインしてきた彼が目に見えない“香り”をデザインするというのが面白い。そこにはさまざまな“遊びの仕掛け”が。すべてがユニセックスのオード パルファム。それもシングルノートを基本としていること。一般的にフレグランスは香料のブレンドの妙による香りの変化を楽しむものが多いが、このコレクションはひとつのエッセンスを際立たせているのが特長。厳選した天然の精油をふんだんに使い、巧みに複雑にブレンドすることで実現している。だから軽やかで奥深い。何度つけても気持ち悪くなるようなこともない。日本人にウケているのはここに秘密があるのかも。
2014.07.30(水)
文=吉田昌佐美
撮影=塚田直寛