「君たちはちゃんと怖がらないといけない」
――ご家族の反応はどうだったんでしょう?
両親は本当に監督になるとは思ってなかったとは思いますが、よく「夢って続けてれば叶うよ」と言ってくれたのは覚えています。
――その後東北芸術工科大学に入学されたのも、やはり映画作りを学びたいという理由だったんですか?
はい、ちょうど新設されたばかりの映像学科に一期生として入学しました。入学が決まった時は本当に嬉しかったですね。これで思う存分映画を作れるぞと。
――アニメーションの『もののけ姫』で映画に目覚めたそうですが、大学に入ったときは実写映画を撮ろうと決めていたんでしょうか?
実は実写の面白さに目覚めたのは大学に入ってからで、当時の学科長だった根岸吉太郎監督のせいですね(笑)。あの人の背中を見て「ああ、かっこいいなあ」と強烈に感じてしまったんです。
もうひとつ大きかったのは、大学に入ったばかりの頃、特別授業として数日だけ講師としてやってきた脚本家の荒井晴彦さん、井上淳一さん、中野太さんの授業を受けたことでした。そこで彼らが話していたことがいまだに忘れられなくて。
お三方は、映画で人を描くというのはとても怖いことなんだと言っていました。映画で自分たちが描く対象は必ず実在する人たちであり、描き方によって如何様にでも彼らを傷つけられる、だから君たちはちゃんと怖がらないといけないと。そこから映画を見る目がぐっと変わり、対象となる人間をどう捉え、描くか、という視点で、実写映画を中心に見るようになっていきました。
