不惑を迎えた浅野忠信の新たな代表作

左から、熊切和嘉監督、浅野忠信、山田望叶、二階堂ふみ、高良健吾。

 2014年6月14日(土)、桜庭一樹の直木賞受賞作を映画化した『私の男』が待望の公開初日を迎え、出演者の浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、山田望叶(もちか)、そして熊切和嘉監督が新宿ピカデリーにて舞台挨拶を行った。

 満員の観客を前に、熊切監督は「企画から4年、この日を迎えられて嬉しいです。最初から、淳悟には浅野さんをイメージして原作を読んでいました。今の浅野忠信が、この空虚さをどう表現するかを見てみたかった。二階堂さんは、別の作品のオーディションで会ったときに『僕のイメージしていた花が目の前にいる』と思いました。原作よりも切実で、強い花になったと思います」と語った。

 二人が演じるのは、10歳で孤児となった花と、養父となった遠縁の青年、淳悟。流氷の町・紋別で父と娘は濃密な時間を過ごすが、ある殺人事件をきっかけに逃げるように東京へ向かう。

 この作品の撮影後に40歳を迎えた浅野は、不惑を迎えた胸中を聞かれ「これはどうしてもやりたい役でした。30代のころ、40になったらどういう役をやりたいかと考えていたんですが、そのイメージ通りだったんです。この作品で、集中すればとことんやり切れるということを学びました。40になって楽になった気がしますね」と笑顔で答えた。

 一方、今年の秋で20歳となる二階堂は、自分で選んだというカラフルな着物にパンプスという装いで登壇。「私にとって特別な作品です。初日を迎えて夢のようですが、さびしい気持ちもします。いつの間にか10代最後になりましたが、これからも変わらずに頑張りたい」と未来への抱負を語った。

 成長した花の恋人、美郎を演じる高良健吾は、熊切監督の大ファンであり、念願かなっての出演。「撮影初日には病気じゃないかと思うくらい汗をかいてしまいました。あまりに緊張しすぎて、あり得ないようなところからも汗が吹き出てしまっていて。でも現場での熊切監督はかっこよかったです」と感激しきりだった。

2014.06.21(土)
文=石津文子