冬は希少な深海魚を見るチャンス!

――水族館は、季節による見どころの違いはあるのですか。
働いている側からすると、1年を通して「旬」という感覚だと思いますが、季節で入ってくる魚が違う、というのはあると思います。水族館の生き物は、業者から買うほか、漁師さんから譲ってもらうこともあり、たとえば「八景島シーパラダイス」さんでは、冬は漁であがった希少な深海魚が入ってくることも多いとか。
また、「アクアマリンふくしま」さんはちょうどいま(2025年9月30日現在)、高速で外洋を泳ぐバショウカジキを展示していて、これは夏から秋に近海の漁で獲れた個体です。深海魚もバショウカジキも飼育が難しく、展示期間は限られてしまいますが、見られる機会はめちゃくちゃ貴重だと思います。ちょっとニッチな話ですが。
――なんかの菌さんの本を読んでいてもそうですが、お話を聞いていると水族館に行きたくなってきます。
大人になってから水族館に行っていないという人もきっと多いですよね。全国にいろいろな水族館があるので、旅行がてら足を運んでほしいですね。
私は水族館のオリジナルグッズも大好きなんです。飼育員が手づくりしたような缶バッジや、そこでしか売っていないグッズはつい買ってしまいます。ぜひ売り場もチェックしてみてください。
――今日、着てらっしゃるラッコの素敵なシャツも水族館のオリジナルですか?

これは、アメリカのモントレーベイ水族館で販売されていたキッズ用のシャツです。かなりレアなアイテムで、メルカリで手に入れました(笑)。ウニの色が無駄に赤すぎたり、突っ込みどころがあって気に入っています。
なんかの菌(なんかのきん)
1983年生まれ。神戸大学大学院で美術史学を学んだのち、水族館に就職。海水魚の飼育員を経て社会教育を担当した。退職後、SNSに投稿していた4コマ漫画やブログが注目されて、初の書籍『水族館飼育員のキッカイな日常』(さくら舎)を出版。現在は、生き物を中心としたイラスト制作などを請け負っている。
Instagram @nankanokin

水族館飼育員のただならぬ裏側案内
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2025.10.16(木)
文=熊坂麻美
写真=志水 隆