日本の水族館は世界でもトップクラス

――水族館というと、イルカやシャチ、ペンギンといった人気者を思い浮かべる人も多いと思いますが、「すべての水槽に見どころがある」と描かれていたのも印象的でした。
どこに魚がいるのかわからないような地味な水槽にこそ、超個性的な生き物が潜んでいたりします。魚名板を見ながらじっくり観察すると、意外な発見があるかもしれません。
あと、水族館自体の個性の違いにも注目してほしいです。
日本は世界のなかでも水族館の数、バリエーションともにトップクラスです。神戸にある劇場型アクアリムをうたった「atoa」さんのように都市型でおしゃれな施設もあれば、昔ながらの水族館もあるし、海獣中心だったり甲殻類や淡水魚限定の水族館も。大人をターゲットにした施設も増えていて、それぞれ展示の仕方や企画も趣向を凝らしていますよ。
――なんかの菌さんも、展示の企画をされていたのですか。
はい。私は歴史好きなので、源平合戦をモチーフにしたヘイケガニの展示や、妖怪にからめた展示を行っていました。“文理”入り混じった見せ方が自分の持ち味だと、勝手に思っていましたが、今思えば、かなり自由にやらせてもらっていましたね。
このように水族館の展示は、飼育員の趣味嗜好が垣間見える面白さもあると思います。
――先ほど、日本の水族館はバリエーションが豊かというお話がありました。とくにイチオシを挙げるなら、どこでしょう?
北海道のおたる水族館ですね。私は「野生の水族館」と呼んでいますが、海を仕切っただけのプールにトドやアザラシが暮らしていて、たまに岩場を乗り越えて野生の子たちが乱入してくるというワイルドさが魅力です。
ショーも特徴的で、動物たちをコントロールしようとしていないというか、失敗しても笑いをとって収めるおおらかさが面白いんです。実際、ペンギンはほぼ言うことを聞きません(笑)。私は生き物本来の生態を見られる水族館が好きなので、そういう意味でもおすすめしたいです。
2025.10.16(木)
文=熊坂麻美
写真=志水 隆