――その後、古舘さんは俳優活動や音楽のソロ活動を経て、2017年に新たなバンド、2(ツー)を結成。途中、THE 2(ザ・ツー)と改名して活動を続けたものの、2024年2月、またも解散を迎えてしまいます。THE 2時代のインタビューからは、再び前向きになりつつも、やはり結果に執着し、結果を追い求めていた古舘さんの奮闘が読み取れました。

古舘 僕は昔からOKAMOTO’Sのハマ・オカモトくんと仲良くさせてもらっているんですが、The SALOVERSの無期限活動休止を発表する前日、ハマくんとご飯を食べたんですね。そのとき、「実はバンドが終わっちゃうんだ。もう、俺なんてダメだ」と話したら、いつも優しいハマくんが、「お前、いい加減にしろよ?」と怒り出して。「お前がそうやって自分を否定し続けることは、お前のことを好きな俺や周囲の人やファンの人たちの価値観まで丸ごと否定するんだぞ?」と言ってくれたんです。
――ハマくん、人格者だなあ。
古舘 僕より1学年上なだけなのに、僕よりとてもしっかりしていて。そのハマくんの言葉で、ネガティブなことばかり言うのはもうやめようと思った。結局、THE 2も解散しちゃったけど、活動中はなるべく結果を残すためだけに悩もうと意識していました。
何もかもコンプレックスと感じてしまうような状態に陥ってしまった
――それにしても、The SALOVERSも、THE 2も、音源をリリースし続け、ライブは東京なら渋谷CLUB QUATTROといったキャパ700人クラスのライブハウスにも立っていた。ちゃんとファンもいたし、決してまるでダメという状況ではなかった。それでも、やはり過去のインタビュー記事を読み返すと、古舘さんは常に焦燥感に駆られていて。
古舘 おっしゃる通りですね。10代の後半でバンドを組んでメジャーデビューして、ファンの皆さんからもすごく愛してもらって。役者も始めて、NHKの朝のドラマや時代劇なんかにも出させてもらえて、冷静に考えたら、かなり恵まれたやつなんですよ。自分なりに頑張っていたし、胸を張れるような自分になれるタイミングだって、いっぱいあったはずなんです。でも、30歳を過ぎても、僕はまだ一度も自分に胸を張れたことがない。しかも、またバンドが解散してしまう。そんな状況が歯痒くて、THE 2解散のあたりは、もう何もかもコンプレックスと感じてしまうような状態に陥ってしまった。そうしたあれこれも、この本に書いた通り、今回の旅の中で感じた様々な思いに繋がっていくわけなんですけど。

――ところで、佑太郎さんと父・古舘伊知郎さんは、どんな関係性の親子だったのでしょうか?
古舘 幼い頃は、「時たま会うおじさん」みたいな存在でしたね。仕事で年中忙しい人だったので、四六時中触れ合うという距離感でもなかったし。幼い頃、一度だけ、一緒にキャッチボールをしたことがあったんですが……。
撮影 杉山秀樹/文藝春秋
〈「うちの家系に音楽の才能があるなんて思うか?」「もう絶対に音楽で見返してやる」古舘佑太郎(34)が父・伊知郎への反骨心むき出しだった学生時代《テレ朝の音楽番組で……》〉へ続く


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2025.04.23(水)
文=内田正樹