10代の頃からミュージシャンを生業としてきた古舘佑太郎さんが32歳でバンドを解散。人生に行き詰ったなかで、先輩ミュージシャンのサカナクション・山口一郎さんに「カトマンズに行け!」と命じられ、日本から追い出されるようにアジア9カ国を旅した記録『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』。
昔から自己肯定感が低く、なにをやっても自分を認められなかったという彼が、混沌のアジアを旅するなかで未知なる世界と対峙し、夜な夜な、自身の喜怒哀楽と内省をぶつけるように書き綴った。激闘の日々の先に見えてきたものとは――?
初めてCDを出してから、セールスに異様にこだわるように

――古舘さんは旅の日記の中で、自己肯定感の低さを繰り返し口にされています。そんな自分を意識するようになったのはいつ頃から?
昔からこじれたやつではあったんですが、それが自己否定にまで向かうようになったのは、最初のバンドでCDを出すぐらいからだと思います。誰のためでもなく、ただ好きで夢中でやっていた音楽が仕事になって、だんだん自分の中の価値基準が、自分ではなくお客さんやスタッフからの評価に変わったんですね。だからセールスに異様にこだわるようになって、もっと売れなきゃ、もっとみんなに伝わらなきゃって思考になって、音楽がどんどん「自分が信じるもの」ではなく「人に認めてもらうもの」に変わっていった。そこに価値基準があるから、思うように結果が出ないのは、イコール自分がダメなんだってことに繋がっていって、コンプレックスがどんどん雪だるま式に膨らんでいっちゃった。
――他人のジャッジに振り回されて、うまくいかない状況を自分の努力不足だと責められてる気がして、どんどん辛くなる構図は「日本社会あるある」な気もします。
僕もずっと自分の努力が足りないからダメなんだって自己否定を続けて、物質的には満たされてるはずなのに生きる気力が感じられなくなっていました。でも、旅に出てみたら、すごく貧しい暮らしをしているはずなのに、生きるエネルギーにあふれている人たちがたくさんいた。ネパールやバングラデシュに比べると、日本やヨーロッパの先進国では自殺者数が多いとも聞きます。それはなぜか、というのを僕なりに考えてみたんですけど、たぶん先進国は発展しているがゆえに、常に人との競争に晒されてるからだと思うんです。
2025.04.04(金)
取材・文=井口啓子
写真=深野未季