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スマホのメモだと僕みたいな人間はすぐ嘘をつく

――今回の本は古舘さんが旅の間、書いていた日記が元になっています。旅の間、どんな心境で日記を書かれていたんでしょうか?

 人に見せるためでなく、本当に自分のために書き始めて。ひとりでどうしようもない気持ちをぶつけるように書いていたんですが、気がつけば日記を書くことが自分の中で支えになってました。日記を書いていたから、2カ月間、ひとりで乗り切れたのかもしれないとも思います。

――カバーを取った本体の表紙には、実際に古舘さんが日記にしていたノートの写真が使われています。まさかの手書きで驚きましたが、手書きだからこそ吐き出せた感情の記録という気もします。

 スマホのメモだといくらでも書き直せるから、僕みたいな人間はすぐ嘘をついたり、話を美化したりしそうだなと思って。手書きだったら気持ち悪いこと書いても直せないので手書きで、安宿のベッドで蕁麻疹に苦しみながら書き殴ってました。

――まさか本になるとも思わず?

 思ってませんでしたね。音楽については、ずっと誰かに共感してほしい、認めてほしいと思ってやってたけど、旅については、誰かに読んで、共感してほしいとはまったく思ってなかったんです。書いた日記をSNSに上げていたのも、いいねが欲しいからじゃなく、こんな気持ちわかるわけないだろ!って吐き捨てるように上げてて、それがみんなの共感を生むなんてまったく思ってなかったので不思議でした。

 これまでの僕は、もっとわかりやすい歌詞で、わかりやすいメロディで、みんながわかる普遍的なことを歌わないといけないと思って、それでも認められなくて苦しんできた。なのに、それとは真逆の気持ちで、自分のためだけに思いをSNSに吐き出したら、なぜかリアクションがバーッと返ってきて、みんなの日常の中に僕の旅が入り込んでいった。

2025.04.04(金)
取材・文=井口啓子
写真=深野未季