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山口一郎に言われた「お前は東京の坊ちゃんだ」という言葉の意味

――本当に、古舘さんの激闘と再生の日々がリアルに体感できて、今すぐ旅に出たくなります。

 いや、これ読んで行きたいっていう人がいたら僕は全力で止めますよ! だって、同じルートなんかで行ったら絶対その人の方が僕よりスイスイ楽しく旅しちゃって、僕がポンコツだってことがバレるだけじゃないですか。一方で、僕みたいに自己肯定感が低くてままならない人には、こんな思いをして欲しくない。万が一、行ってなにかあっても責任取れませんし。僕はなんとか帰ってきましたけど、二度と行きたくない。おすすめはしませんね。

――おすすめはしないんですね(笑)。では、カトマンズにはすぐに行けないという人に、代わりにおすすめできることはありますか?

 人それぞれだと思いますが、やったことがないことをやってみるのはいいと思います。別に旅でなくてもいい。富士山登るとか、大それたしんどいことである必要もない。知らないお店に入るとか、ビーズ作りをやってみるとか、本当に些細なことでいいので、自分の興味とは真逆のものに手を出してみることは、すごくおすすめします。

――今回の旅もまさにそれですよね。

 だから一郎さんが僕にして欲しかったことって、結局それだと思うんです。

 「お前は東京の坊ちゃんだ、自分の興味の中でしか生きてこなかった。世界はお前の知らないことで溢れている。それを見てこい」って言われたとき、僕はそれがどういうことだかわからなかった。でも、今はすごくわかる。自分のことが辛かったり、好きになれないということは、今までやってきたことの中にエラーが含まれているからで、今までと同じ生活の中でずっと解決策を考えていても、そこから抜け出すのは難しい。だったら自分のルーティーンとは違うものに手を出して、まったく因果関係がないところに振り切った方が絶対いい。それが僕にとっての「旅」なんですね。

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古舘佑太郎(ふるたち・ゆうたろう)

1991年4月5日生まれ。東京都出身。2008年、バンド「The SALOVERS」を結成し、ボーカル・ギターとして活動スタート。2015年3月、同バンドの無期限活動休止後、ソロ活動を開始。2017年3月、新たなバンド「2」を結成。2021年6月に活動休止し、2022年2月22日にバンド名を「THE 2」に改め再開。2024年2月22日に解散。俳優としては、2014年、映画『日々ロック』でデビュー。以降、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』、NHK大河ドラマ『光る君へ』、映画『ナラタージュ』などに出演。主演映画に『いちごの唄』『アイムクレイジー』などがある。

『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』

定価 1,980円(税込)
幻冬舎
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2025.04.04(金)
取材・文=井口啓子
写真=深野未季