この記事の連載

先人の知恵や人々の営みが自分の生活を見直すきっかけに

 レトロな町並みを散策しながら、宿根木で穏やかな時間を過ごしていた工藤さん。宿根木の魅力は、工藤さんの目にどう映ったのでしょうか。

「住居の木材の使い方や屋根の造りなど、地域の特性に合わせて衣食住するための先人たちの知恵が町の至るところに残っていて面白いですよね。今は何も心配せず家を建てたり住んだりすることができますが、万一何かあったとき、こうした工夫を凝らすことの大切さを痛感すると思う。そういう心得も含めて、学びを得られる場所だなと思います」
 

 「宿根木では今でも漁師や農家の方が住んでいらっしゃいますが、現代に合った暮らしをしながらも古きよき時代の建物や風景をリスペクトし、後世に残そうとしてくれている。そのおかげでこうして僕も当時の時代の空気感を感じることができるわけで、改めてすごいことだなと思います」

 こうした場所を訪れるたび、つい当時の人々の営みを妄想してしまうと工藤さんは話を続けます。

「この狭い路地にどれだけの人がいたのだろう。狭い石畳の道をガタガタ音を鳴らしながら金を運んでくるとき、生活している人の邪魔にならなかったかなとか、もしかしたら子供が飛び出してきて“危ないよ!”という声が飛んでいたかもしれないなとか。家と家が近いから、夫婦喧嘩の声は聞こえていたんだろうな、とか。今日もいろんな妄想をしながら歩いていました。

 僕たちの今の暮らしはとても便利で、それはそれで素敵なことですが、不便さのなかにも面白さはあると思っていて。だからこそ、当時人々がどのような工夫で不便を乗り越えて楽しく暮らしていたのか気になりますし、想像してみることで、自分の生活を見直すきっかけにもなります」

 かつての金山がもたらした輝きとは、また違うきらめきを放つ“世界遺産の島”佐渡。東京からでも3時間半~4時間ほどで辿り着くこの島で、2025年、ゆったりと非日常の旅をしてみるのはいかがですか。

工藤阿須加(くどう・あすか)

1991年8月1日生まれ。埼玉県出身。ドラマ『理想の息子』(2012)で俳優デビュー。『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017)、『ハケンアニメ!』(2022)、Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』(2023) 。舞台『シラの恋文』(2023~2024)では初舞台に挑戦した。2021年より山梨県北杜市で農業を始める 現在、NTV「有吉ゼミ」内コーナー「工藤阿須加の楽しい農園生活」、BS朝日「工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました」に出演し、自身でも農業について学ぶ。食の問題について精力的に発信。2024年公開の映画「ゴールデンカムイ」では、月島基役を好演。

宿根木

所在地 新潟県佐渡市宿根木
https://shukunegi.com/

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2025.03.29(土)
文=CREA編集部
写真=佐藤亘
動画=VECKS
ヘアメイク= 中嶋竜司
スタイリング=伊藤省吾