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チュ・ジョンヒョクさんインタビュー【前篇】
チュ・ジョンヒョクさんインタビュー【後篇】

3月7日(金)より公開の映画 『ケナは韓国が嫌いで』 で、主人公ケナのかけがえのない友・ジェインを演じる チュ・ジョンヒョク。本作は、韓国の熾烈な競争社会や格差社会に息苦しさを感じる28歳の女性ケナが、ニュージーランドで人生の可能性を模索する姿を描き、第28回釜山国際映画祭のオープニング作品 に選ばれるなど、話題を集めている。
チュ・ジョンヒョクといえば、ドラマ 『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の腹黒策士クォン・ミヌ役で一躍脚光を浴びたが、この映画はそれ以前にキャスティングされたもの。実は彼自身、ニュージーランド留学の経験があり、演じるジェインというキャラクターに強く共感したという。
チャン・ゴンジェ監督と原作小説のファンでした

――実は1年ほど前、釜山国際映画祭の時にチャン・ゴンジェ監督たちと一緒にジョンヒョクさんにお会いしています。今日はゆっくりお話ができるのを楽しみにしていました。
お久しぶりです。見覚えがあるお顔だなと思いました。僕も今日は一所懸命に頑張りたいと思います。
――『ケナは韓国が嫌いで』はとても素晴らしく、色々と発見がある映画です。チャン・ゴンジェ監督は、ジョンヒョクさんがインディーズ(大手が出資しない独立映画)の短編映画に多数出演されているのを見て気になっていたそうですが、ジェイン役にキャスティングされた時の感想を聞かせてください。
以前、監督がそのようにおっしゃっていたのを聞いて、僕もとても驚きました。それは、監督がインディーズ映画の短編を観てくれていたということにですね。短編映画は映画祭などでないとなかなか観ることができないので。そして僕自身、チャン監督のファンですし、原作小説『韓国が嫌いで』も読んでいて、とても好きな作品でした。
さらに、映画の撮影が原作の舞台であるオーストラリアではなく、ニュージーランドで行われると知り、ぜひとも演じたいと思いました。僕はニュージーランドで留学生活をしていたことがあるので、その経験を生かすこともできますから。

――監督は日本で撮影された映画『ひと夏のファンタジア』をはじめ、インディーズ映画で長く活躍されていますが、監督の演出で特にどんなところが印象に残っていますか? また、ジョンヒョクさんから見て、チャン・ゴンジェ監督ならではの特別な魅力や、他の監督とは異なる点があれば教えてください。
僕が演じるジェインというキャラクターを作り上げるため、撮影前に監督とは色々と話をしました。たとえば、主人公のケナにとってジェインというのはどんな存在であるのか、またジェインがなぜニュージーランドに留学に来たのか、そういったことを細かい部分まで話し合いました。
また、衣装合わせの時にたくさん洋服を着たのですが、監督がすごく悩んでいらっしゃることも感じられました。僕自身、そこで色々とアイデアを出したりもして、それが役作りに役立ちましたし、そんなふうに率直に何でも話し合えるところがチャン・ゴンジェ監督の、監督としての特別な部分なのではないのかと思います。
――原作小説『韓国が嫌いで』が元々好きだったと伺いました。どんな部分が好きだったのでしょうか?
実は僕はそこまで読書好きというわけではないんですね。けれども『韓国が嫌いで』はとても面白くて、一気に読み進めることができたんです。まず、ケナが旅に出るまでの過程に強い勇気を感じましたし、ケナという人物を中心に様々な出来事が起きますが、読み進めるうちに、自分自身の経験とも重なる部分があり、「わかる、わかる」と共感することが多かったですね。ケナがすごく辛かったんだろうな、と抱えていた苦しさや葛藤には、深く共鳴しました。
――ケナよりも先にニュージーランドに来ているジェインは、シェフになるという目標が明確にある人物です。一方、ケナは韓国社会の持つ閉塞感、生きづらさを打破するために、安定した仕事も恋人も手放し、ニュージーランドにやって来る。この二人の気持ちの違いをどんなふうに解釈していましたか?
個人的には、ケナとジェインの間に大きな違いはないと感じています。ジェインも最初からシェフになるという夢を持って海外に出たわけではなく、自分の個性やアイデンティティを模索しながらさまざまな国を巡るうちに、最終的にニュージーランドに定着し、そこで過ごす中でシェフという夢を見つけたのだと思います。
ケナもまた、自分なりの何かを探し求めてニュージーランドにやってきました。そういう意味で、僕はケナとジェインはとても似ているなと思っているんです。
2025.03.07(金)
文=石津文子