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 映画『ケナは韓国が嫌いで』で、ニュージーランドでシェフを目指す青年・ジェインを演じる俳優のチュ・ジョンヒョク。実は彼自身もニュージーランドに留学経験があり、大学ではホテル経営を学ぶなど、多彩なキャリアを歩んできた。紆余曲折を経て、夢だった俳優の道へ進んだ彼は、決して早いスタートではなかったものの、持ち前の明るさと前向きな姿勢で着実にキャリアを築いている。そんな彼が語る、“夢を追うこと”についての考えとは?


夢は決して、若い人だけのものではない

――映画『ケナは韓国が嫌いで』では、公務員試験に落ち続けるケナの友人が登場します。韓国の熾烈な競争社会のなかで、夢を追い続けることはやはり大変なことでしょうか?

 夢を追いかけること自体が、生きるうえでの原動力になると僕は思うんです。競争社会という意味では、韓国に限らず、どの国に行っても過酷ですし、どんな職業でも熾烈なものだと思います。そのなかで大切なのは、どう対処するかということ。 「競争が激しく、夢を追うのは大変だ」と考えるのではなく、「夢を追っているからこそ、この環境でもやっていける」と前向きに捉えられたら、それが自分の原動力になり、エネルギーが湧いてくるんじゃないでしょうか。僕はそういう考え方なんです。

 夢というのは、決して若い人だけのものではなく、時間が経ってから生まれることもあると思うんです。だから、「誰もが夢を持つべきだ」とは僕は思わないんですね。 夢や目標があっても、状況によって突然変わることもありますし、逆にずっとなかったけれど、ある日ふと生まれることもある。だったら、夢が生まれたときにそれに向かって挑戦する方が、人生をより楽しめるのではないでしょうか。

――なるほど。俳優になる以前、海外の飲食店での仕事のオファーを受けるか、俳優の夢を追いかけるか悩んだ時に、お父さんに「夢を選びなさい」と言われて実践したそうですね。そして成功したジョンヒョクさんの前向きさを見習わないと。

 成功というのかな? 成功というのはまた違う基準があると思うのですが、とにかく父親が夢を選べと言ってくれたおかげで、今演技の仕事が出来ているのは確かですね。

――では、そんな今のジョンヒョクさんの夢はなんですか?

 今の夢? 夢に向かっている青年である、と自分では思っています。演技をして、素晴らしい作品に出会っていくという、その夢に向かっている過程にあるというか。

2025.03.07(金)
文=石津文子