女性が一つの光を見出して、立ち上がる姿を描き続けて

――次々と構想が生まれていますね。創作の原動力は、どこからわいてくるんですか?

大木 私自身、生きづらさを抱えることが多くて、「この気持ちを解消してくれる本に出合いたい」と思っていたからかもしれません。アイドル時代にNHK紅白歌合戦に出演するときも周囲からは「凄いね」と言われましたが、私はセンターで踊る人気メンバーではなく、テレビ画面に映らない花道で踊っていただけ。もちろん、それでもありがたいことですが、「他者から見られている華やかな自分」と「実際の自分」に大きな乖離がありました。

 フリーランスライターになってからも、「元アイドルなんだから、ちょっと歌ってよ」と言われ取引先との会食の席でAKB48さんの曲を歌って接待したり、本当に色々なことがありました。

 その頃の自分が読んで希望を見出せるような、女性が一つの光を見出して、掴んで、立ち上がる姿を描きたいんです。

 一方で最近は男性の生きづらさにも目を向けるようになりました。「男たるもの、強くあらねば」とか「男は弱みを見せてはいけない」というような、男性側の呪縛もまだまだある気がして。

 難しいテーマですが、誰の孤独も置き去りにすることなく、作り続けたいと思っています。

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大木亜希子(おおきあきこ)

作家。14歳で女優デビュー。その後、2005年にドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)に出演し、数々のドラマ・映画に出演。2010年に秋元康氏がプロデュースするSDN48でアイドル活動を始める。芸能界引退後は、2015年から大手ニュースサイトに記者として入社。2018年フリーランスライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社/2023年に映画化)、『シナプス』(講談社)。

マイ・ディア・キッチン

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2025.03.05(水)
文=ゆきどっぐ
写真=橋本 篤