この記事の連載
- 上坂あゆ美&valknee対談【前篇】
- 上坂あゆ美&valknee対談【後篇】
「自分最高!」って本気で思ってる?
上坂 バルニーちゃんは(ラップのリリックの中で)結構「自分最高!」みたいなセルフラブ的なメッセージが多いじゃんか。あれってどんくらい本気で思ってる?
valknee うーん。基本的には結構ガチで思ってる。私は自分の内面はすごい好きなんだけど、見た目がすごく好きじゃないのね。「超嫌い」までではないけど、世間からの評価とか、世間で美しいとされている基準と合ってない部分が自分で意識できるから、社会を通して見るとすごく嫌。とはいえ、自分ひとりになったら、かなり自分を愛している方かなと思ってる。
上坂 じゃあそこはマジなんだ。私は、短歌もそうなんだけど、半ば「自分最高!」って自分に言い聞かせてる感覚がある。短歌にしちゃったら死なないで済むと思って。自分はうっかり死んじゃいそうだなって思うことがすごくあるし、年々多少マシにはなってるけど、やっぱ自己否定癖すごいし。バルニーちゃんほどマジで自分を愛せてはない気がする。
valknee なるほどね。そこまではわかんなかったな。図太い人なのかなって思ってた(笑)。
上坂 そうだよね(笑)。『老モテ(上坂の第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』)』を出した時は、インタビューでもわざと強そうな発言をしてたと思うんだけど。最近は世の中で「セルフラブ」って言われすぎじゃない? 自分を愛するのって人生で一番大事だけど、それが一番むずくね? って思う。それを安易に言ってくる社会に対して怒りが湧いてくる。
valknee うん、わかる。もし「セルフラブ系アーティスト10選」とか入れられたら、めっちゃ嫌だ。
上坂 何? 「セルフラブ系」って(笑)。でも私、別にセルフラブに限らず、くくられたくないのね。「女性歌人」も「アラサー物書き」って言われるのも超嫌だし、もう全部のくくりが嫌いだから、なんだって嫌なんだけど。
2025.01.17(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=平松市聖