湯気が上がるアツアツの鍋料理が恋しい季節になりました。毎日鍋でもいいぐらい、と思う方も多いのでは?

 そこで、日々、日本全国を飛び回り、全国の優れた暮らしの道具を訪ね歩く、ひとり問屋「Studio BOKE」を主宰する日野明子さんに、食卓での姿も見目麗しく、使いやすい土鍋をセレクトしてもらいました。


■山本忠正さんの飴釉土鍋

 三重県伊賀に工房を構える「やまほん陶房」代表、山本忠正さんの伊賀焼の土鍋は艶やかで品のあるフォルム。あたたかみのある深い飴色にも、ほっと和みます。

 土鍋はぺタライトという鉱物を混ぜてつくられることが多いそうですが、こちらは伊賀の土だけを使ってつくられています。伊賀の土は土中に小さな空洞があり、鉄分が少ないため焼締まらないことから、耐火温度が高く、土鍋本来が蓄える熱で具材がじっくり温まります。

 さらに土鍋を使い込んでいくと、土の中にある小さな空洞が細かいヒビとなって熱膨張を逃がす役割をします。因みに、熱による膨張に耐えられなくなった際に“割れる”のだそうです。このあとご紹介する「目止め」はそのヒビの間を埋めるためにおこなうこと。使い続けていくうちに、土鍋は強くなっていきます。

 浅型で広がりのある形は具材も見やすく、鍋の内側も飴色の釉薬がかかっているので「豆腐の白や春菊のグリーンがとても映えます。キムチ鍋などもいいですね。冬じゅう大活躍しますよ」と日野さん。

 オーブン料理にも使える土鍋なので、冬の鍋ものに限らず一年中重宝しそうです。

土鍋の使い始めに欠かせない「目止め」

 土鍋を初めて使う際に必ずおこないたい「目止め」。土鍋の原料である土(陶土)には小さな穴が無数にあるので、この穴を塞いでから使用します。陶土の無数の穴を「目」と呼ぶので、この目を塞ぐことが「目止め」となるわけです。

 目止めにはいくつか方法がありますが、「米のとぎ汁や小麦粉、片栗粉を水に溶いて煮たり、お粥を炊いたりします」と日野さん。いずれも最初は極弱火で、徐々に弱火、中火と火を強めて土鍋が火に慣れてくるのを見守りながらおこないます。

 さらに、土鍋を長持ちさせるための注意点として日野さんが教えてくれたのは

1    急冷・急熱しない
土鍋が熱いうちに急に冷たい水を注いだり、冷えた土鍋を急に強火にかけるのはNG

2    底が濡れた状態で火にかけない
致命的なヒビ割れなどの原因になるのでNG

3    完全に乾かしてから収納
生乾きはカビや臭いの原因になるので、天日などで完全に乾かしてから収納する

 もし、使っている間にヒビ割れて水漏れした際には、「目止め」をすると表面に模様のように入るヒビ(貫入・かんにゅう)が埋まります。「折りをみて、おかゆを炊くといいですよ」と日野さん。

2024.12.27(金)
文=CREA編集部
写真=橋本 篤