■kanaeだえん土鍋

「だえん形」というあまり見かけない形状のこちらは、三重県四日市で作られる萬古焼(ばんこやき)の土鍋。萬古焼の土鍋は、国内生産第1位、全国シェア80%を占める定評のあるものです。
江戸時代の中期に桑名の豪商が窯を開いたことに始まる萬古焼。約300年もの歴史ある産地の土鍋はペタライトという鉱物を配合した低熱膨張性陶土で作られているので、高火力のガスでも割れにくい土鍋として全国に広がったそうです。
だえんの形状は小さなテーブルでも場所をとらず、食器のようなリム(縁)があるので、調理鍋として使ったときもほかの器に盛りかえずに、そのまま食卓に並べられるという利点もあります。

「野菜を敷き詰め、肉をのせて蒸し焼きにしたり、ポトフや炊き込みご飯などにも使える便利な土鍋です。リムがあるので吹きこぼれも防いでくれます」と日野さんも絶賛。シチューやビーフストロガノフなどの洋風煮込み料理や、油をしいて肉を焼くなどフライパンのような使い方も可能です。
一般的な土鍋よりも軽くて扱いやすいので、冬の鍋もの以外に毎日の調理鍋としても使い勝手のよい土鍋。この冬、鍋を囲むことをきっかけに育ててみてはいかがでしょう。
■野村亜矢さんのオーバル土鍋

姿形からも、表面の質感からもぬくもりが感じられる野村亜矢さんのオーバル土鍋。型もろくろも使わずに手びねりによって形づくられる土鍋は、焼成前の成形の時にヘラで削る工程により、ろくろでつくった土鍋とは異なる独特な表情が生まれます。
和とも洋とも分類しがたく、無国籍な雰囲気を纏う野村さんの土鍋は、寄せ鍋やしゃぶしゃぶ、鶏の水炊きなどの定番鍋料理のほか、洋風のコトコト煮る料理はもちろんのこと、エスニックや参鶏湯などの韓国料理、鶏や豚の塊肉を茹でたり、蒸し焼きにするのも似合います。
工房があるのは愛知県の三河安城。お母さまが営む花と器の店に併設されており、植栽や鉢植えなど植物が生いしげる空間で土鍋やグラタン皿のほか、花器などを作陶されていますが、手びねりのため量産が難しく、入手するのに少し時間がかかるかもしれません。
野村さんのインスタグラムなどをチェックして、手びねりならではの唯一無二の土鍋と出合ってください。



花と器 野むら
Instagram @hanatoutuwa.nomura
2024.12.27(金)
文=CREA編集部
写真=橋本 篤