日野明子さんが“育てた”土鍋をご紹介

 毎日の食事づくりでも「パスタを茹でるときはステンレスの寸胴鍋を使いますが、あとはほとんど土鍋です」と言う日野さんが使ってきた土鍋は、どれもいい顔に育ちました。コロンとした愛らしい形の虜になっただけでなく、長く付き合ってきたのにはそれぞれに理由がありまして。愛用ポイントを伺いました。

 三重県伊賀の松山陶工場でつくられる、伊賀土を使用した土鍋。「スープやおかゆなどの調理や温めにとても便利ですが、私はチャイ専用に使っています。価格も手頃なので、作るものを決めて専用に使うのがおすすめです」と日野さん。電子レンジやオーブンも可能なので、ひとり分の食事にも重宝しそう。

 ご飯が美味しく炊けることにも定評のある、鳥取県の岩井窯でつくられる片手鍋。“鳥取民藝の父”と呼ばれる吉田璋也の思想に感銘を受けて作陶を志した山本さんの作品に日野さんは「姿形にグッときました。“釉だまり”と呼ばれる釉薬の濃淡がかっこいいですよね。豆を炊いたり、煮込みやシチューなどにも合う土鍋です。においが付きにくのか、連続調理に耐えるのもいいところ」。

 使い込むほど釉薬の艶の濃いところ、薄いところがいい表情に育っていくのを楽しみたいもの。

 三重県伊賀で、伊賀の土を使い、手挽きろくろを回して作陶する土楽。日野さんはこちらの「織部釜」を長年愛用しています。「白飯が大好きな私は、土楽の定番であるこの土鍋で目分量の水加減(笑)で炊いています。ムラなくふっくらと炊き上がりますよ。木蓋は趣があるだけじゃなく、余分な水分調整もするそうです」。もちろん玄米や炊き込みご飯も炊けるので、使用頻度は高いそうです。

 「土鍋」は寒い冬の時期に鍋料理でしか登場しないのがもったいないぐらい、活躍してくれる優れた調理道具。使い込むほど味わいが出て、愛着も沸いてくるものです。新しい土鍋を入手したら、まずは「目止め」をおこなって、自分好みの土鍋に育ててください。

2024.12.27(金)
文=CREA編集部
写真=橋本 篤