この記事の連載
なぜ同世代や女性がバラエティをやめていくのか
でも全員が全員そう考えるわけじゃないので、バラエティの制作から女性がいなくなっちゃうんでしょうね。「これは私の幸せじゃない」「これは私のQOLを満たせていない」ってちゃんと気づける。
気付けるのもすごいことだと思います。私は諦められないから、しぶとく残っているんじゃないかって。負けず嫌いなんでしょうね、多分。
――仕事の中で達成感を覚えたりめちゃめちゃ楽しかったりする瞬間があることで、諦めずに済んでいるんでしょうか。
もちろん日々担当している業務の中で内心ガッツポーズをする瞬間はあって、そういうときは達成感があります。『笑コラ』のスタジオで所(ジョージ)さんが自分が作ったVTRで爆笑してくれた瞬間、音楽番組で担当したアーティストさんから「演出すごく良かった!」とお褒めの言葉をいただいた瞬間、『24時間テレビ』の中継車演出をやり終えた瞬間とか。
ただ、それはご褒美って感じかなぁ。目標、なんなんだろう……でもやっぱり、私は『めちゃイケ』で育ったから「とにかく何も考えずに笑える番組を作りたい」というのは根底にありますね。
――ご自分で企画を立てて実現された経験はあるんですか?
ピースの又吉(直樹)さんの『遠回りな答え』というコント番組をつくりました。又吉さんのところに芸人やアイドルが悩み相談に来て、その悩みを解決すると見せかけて変な方向に話が膨らんでいって、でも最終的には解決する、みたいなコントですね。ひとつの話がねじれていった挙げ句にもとに戻るようなストーリーが好きなんです。
ドラマみたいなコント特番をやりたいと思っていたときに、編成から「なんでもやっていいよ」と言われたので企画をねじ通して、放送作家のオークラさんに台本を書いていただいて。朝まで一緒に台本作業をしました。
――やりたかったことを実現させた経験は、その先の目標を明確にしてくれそうなものですが。
これは個人的な反省になっちゃうんですけど、やってみて気づいたのが、自分がやりたいことをやると数字をガン無視したアートみたいな番組になっちゃうんですよね。だから『遠回りな答え』は、めっちゃマニアックな番組になってました。
テレビっ子だから、普段やっている『笑コラ』のVとかはちゃんと“テレビ”を作れるんですよ。でも自分主導になると多分、「このほうが美的に美しい」みたいな考えが強すぎるんでしょうね。テレビの演出家としては致命的です(笑)。 頑張って欠点を直すべく、修行しています。
――前篇で『THE W』に関して、美的な観点を活かして宣伝戦略を練ったという話を聞かせていただきました。番組の宣伝を目を引くものにするという点においては、その観点は生きたのでは。
そうですね。だけど、それがまだテレビ制作に応用できてないっていう……(笑)。私は自分が先導して作っていくことより、みんなで一緒に何かを作るのが好きなんです。大型特番をみんなで一緒に作っていって、そのピースとしてそこにいるのが好きで楽しい。
大きい番組でこそ言いたいことを言って、やりたいことをやり通していこうと思ってます。そしていつかは土曜日の8時に自分の演出番組を持ちたいです。日テレの片岡明日香として!
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片岡明日香
日本テレビ番組プロデューサー・ディレクター。2019年日本テレビ入社。担当番組は『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』『with MUSIC』『おしゃれクリップ』『女芸人No.1決定戦 THE W』『THE DANCE DAY』『THE MUSIC DAY』『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』など。
Column
テレビマンって呼ばないで
配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。
2024.12.10(火)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖