この記事の連載

●第2位『ボールアンドチェイン』南Q太/マガジンハウス

 冷え切った夫婦関係に悩む〈あや〉。性自認に揺らぐ中、結婚を控える〈けいと〉。まったく接点のなかったふたりの人生が交差するとき、「女」や「妻」、「普通」や「常識」……自分を縛るものと闘い続ける「私たち」の物語がはじまる。

 Web版「GINZA」の2023年漫画コンテンツ・年間PV数1位を獲得した、読むと心が奮い立つ南Q太さん最新作。

荻野さん推薦コメント

「感情の機微や描かれる空気感がリアルで生々しく、読み始めると物語の世界にどんどん引き込まれていきます。自分を縛るものと闘い続ける姿を見て、知らず知らずのうちに自分も縛られていることに気付かされ、読む度に何かが少しずつほどけていくような心地です。自分はどうしたいのか、どう生きていきたいのか、考える”きっかけ”をくれる作品。これからも追い続けていきたいです」

●第3位『あくたの死に際』竹屋まり子/小学館

 大企業に勤めて仕事も順調、彼女とも良い感じな社会人・黒田マコトは、実生活の小さな積み重ねによって心を病んでしまう。休職し療養に励む黒田が出会ったのは、学生時代の文芸部の後輩・黄泉野季郎だった。

 卒業後、売れっ子小説家になっていた黄泉野に焚き付けられ、黒田は再び筆を執ることにするが、それは艱難辛苦の道で――。書かずに死ねるか。創作の苦悩と喜びをあぶりだすように描く意欲作。

荻野さん推薦コメント

「読んだ瞬間、あぁ、すごい作品がまた出てきてしまった!! と大興奮。読む手を止められなくなる大好きな作品です。一気に引き込まれて、痛いくらいにグサグサ刺さります。言葉一つ一つが重たく、腹の底まで響くよう……。凡人とは? 天才とは? 才能は必要なのか? もどかしく、搔き立てられる焦燥感。人間に潜む狂気や葛藤。心をえぐるような表現と熱量に圧倒されます。マンガワンで連載も追っているのですが、更新されるのを心待ちにしている作品です」

荻野晶(おぎの・あき)さん
honto コミック担当

話題作からBLまでマンガ全般をこよなく愛し、月に100冊以上読む雑食派。マンガのキャラクターを讃えるアワード「マガデミー賞」の審査員も務める。
honto https://honto.jp/

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