突然BGMが変わる瞬間って絶対ある
――伊藤さんのエッセイを読んでいると、辛いときこそ、その状況をおもしろがれる自分でいたいというガッツが湧いてきます。
辛かったり嫌だったりしたことも、エンタテイメントにすることで意味があったと感じられるし、誰も笑ってくれないと嫌だったことがヘドロみたいに人生の中に残っていくので、ジメジメせず花火みたいに爆発させたいですよね。
これもエッセイで書いたんですが、私、カーテンコールが好きで。『蒲田行進曲』みたいにいろいろあっても最後は善人も悪人も死んだ人も、みんなで手を取り合って大団円で終わりたい。
分かり合えないとか、みんな深刻に考えすぎだと思うんですよ。どうせみんな死んじゃうし、答えが出るようなことじゃないのになんで憎み合ったりするのかなって。月並みですけど、自分のことを一番に考えることが周囲の平和にも繋がると思って、自分のことばかり書いています。
――今回の本も、いわゆるエッセイ集でありながら、伊藤さんの半生を言葉で追体験するエンタメになっています。
最初の本ということで、人生のハイライト的に面白かったものを全部ここに集めてしまったので、ネタの枯渇が心配です(笑)。
恋愛も今のお相手は極めて穏やかな人なので、最近は何も起きないというか、起きないで欲しいと私が思っちゃってるんですが、普通に過ごしていても日常で突然BGMが変わる瞬間って絶対あるし、普段から自然にドーパミンがパーッと出ることを探しちゃっているので、これからもそういう瞬間を掴み取っていきたいですね。
伊藤亜和(いとう・あわ)
文筆家。1996年横浜市生まれ。学習院大学文学部卒業。noteに掲載した「パパと私」が注目を集める。本作は初のエッセイ集。CREA WEBに寄稿したエッセイ「死神と歌って」はこちら。
存在の耐えられない愛おしさ
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ゲストの方に気になる話題を語っていただくインタビューコーナーです。
(タイトルイラスト=STOMACHACHE.)
2024.07.13(土)
文=井口啓子
撮影=榎本麻美