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ぼくは喫茶店が好き。いわゆる昔ながらの純喫茶。行きつけはいくつかあって、一つは、四条河原町の「フランソア喫茶店」。ノスタルジックな昭和の匂いがするのがぼくの好みで、行くとウィンナ・コーヒーをいつも注文する。三条寺町の「スマート珈琲店」は昔ながらのドッシリとしたプリンが名物で、これが異常においしい。三条河原町の交差点にある「喫茶葦島」は自家焙煎コーヒーとチーズケーキが美味だ。東京ではチェーン店に駆逐され、こうした純喫茶は姿を消してしまった。
――『風待茶房 松本隆対談集 1971-2004』より抜粋
「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」は、松本さんのお気に入りの喫茶店。鎌倉駅のほど近く、小町通りを一本入ったところにある。マスターの堀内隆志さん自らが焙煎するこだわりのコーヒーが評判で、1994年のオープン以来、客足の絶えない人気店だ。
鎌倉の東端・十二所に眠る筒美京平さんのお墓参りからスタートし、青春時代の思い出を探して葉山や秋谷の海岸をめぐったこの日、「やっぱり堀内さんの顔も見とかなくちゃ」と鎌倉の中心部に戻り、小町通りへと向かった。「コーヒーとパフェを食べたいな」と松本さん。「そろそろ糖分補給の時間ですもんね」とわたし。しかしきょうは日曜日。いつにも増して店の前には行列ができている。松本さんは「店名のとおりだね。日曜日が待ち遠しい(Vivement Dimanche=ヴィヴモン ディモンシュ)人たちがたくさんいる」と最後尾に並んだ。
「ディモンシュは、川勝くんが連れてきてくれたのが最初。90年代の終わり、97年くらいだったと思う。その頃ぼくは、ウェブサイトの運営を始めようと、川勝くんにサイトの編集長になってもらって中身をどうするか相談してたんだ。そして、ぼくが『風待茶房』という架空の喫茶店のマスターとなり、さまざまなお客さんを招いてトークするのをメインコンテンツにすることが決まった。すると、川勝くんが『鎌倉に素敵な喫茶店ができたんです。雰囲気を参考にしましょう』って言ったんだ」
2024.11.17(日)
文=辛島いづみ
撮影=平松市聖