華麗な都で満喫する贅沢な 舟あそび

◆星のや東京/星のや京都

 「その瞬間の特等席へ。」をテーマに圧倒的な非日常を提供している星のや。かねてからクルージングを特別な体験として位置づけ、さまざまなアクティビティに取り入れてきた。

 隅田川や東京湾から都心を眺める星のや東京、平安貴族さながらに舟で嵐峡を往く星のや京都の舟あそびはその代表格だ。

 京都も東京も国内屈指の観光地であり、ここ数年だけでも大きな変化を遂げているが、舟に揺られ水の流れに身を委ねながら陸を眺めていると、遠い過去と現代が同じ空間に存在する不思議にふと気づく。

 舟はまた、越境のメタファーでもある。

 日常の枠をゆるりと越え、まだ見ぬ土地の美しさや人の営みを発見する星のやのクルージング体験。その唯一無二たる優雅な世界へご案内しよう。

水上の非日常、星のや東京

 江戸は“水の都”であった。人や物資を運ぶための運河が張り巡らされ、水辺は市場や問屋、商店で賑わい、人々は粋な舟あそびを楽しんだ。

 翻って現代の東京は、ビルや住宅に囲まれた大都会。ソリッドな街に安心しながらも、どこか息苦しさを感じる心が、絶えず流動する川や海に惹きつけられるのは自然なことかもしれない。

 東京・大手町の星のや東京では、日本橋から東京湾を貸切舟で往復するクルーズ体験〈お江戸のご褒美舟あそび〉を用意している。

 夕方、舟に乗り込み、いくつかの橋をくぐり抜けながら隅田川に出ると、現代の“水の都”が目の前に現れる。

 かつては船着き場や倉庫が並んでいた越中島、造船所があった石川島、多くの漁師が移り住んだ佃島などのドラスティックな変貌。

 エレガントなアーチを描くレインボーブリッジに、いまや野鳥カワウの繁殖地となった古の第六台場。周囲を高層ビル群に囲まれてしまった東京タワー、逆に堂々と見える東京スカイツリーなど、過去と現在が交錯する景観は見飽きることがない。

 舟上で提供される食事は、江戸の情緒を残す日本橋界隈の老舗名店による折詰が。

 甘辛い味付けのおかずを肴に日本酒をいただきながら、夕景から夜景へと移り変わるドラマティックな世界に浸りたい。

2024.10.29(火)
文=伊藤由起
写真=志水 隆(東京)、長谷川 潤(京都)

CREA Traveller 2024 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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