日本のホテルの未来、旅の形の変化について、トップホテルプランドであり続ける星野リゾート代表・星野佳路氏に話を伺った。世界と日本の意識の差で見えてきたものとは。
自然環境を守る意識が世界ではより高まっている

「コロナ禍に何が起きたのか」を見ていくと、経済活動が止まったことで、自然環境面では大きなメリットがありました。ハワイの海は透明度が戻り、インドでは大気汚染が改善され、街からヒマラヤ山脈の絶景が望めたと言います。私もまったく同じ体験をしていて、スキーで訪れた日本の雪山は人がいないおかげで、雪の状態がすばらしく最高の滑りができました。経営者としては苦労しましたが、得るものも多かった。
移動の規制が緩和され、今後、世界の観光業は伸びると言われています。そのなかで新たなステップを踏み出した地域がいくつかあり、一つがハワイのハナウマベイ。1日の入場人数をコロナ禍前の3分の1にし、1週間のうち2日間は入場者をシャットアウトして、自然の力で海水汚染を回復させる試みを行っています。
ニュージーランドのあるスキー場でも、環境保護のため事前予約制にし利用人数を制限。世界の観光地は、コロナ禍前の2019年モデルに戻るのはやめて、新しい形を模索していて、単に多くの人に来てもらうのではなく、観光地側が制限をかけるなどして、お客さんを選ぶ傾向にあります。しかし、日本は相変わらず2019年に戻ろうとしているようで、世界との差が開いてしまうのではないかと懸念しているんです。
2023.10.30(月)
文=梅崎奈津子
写真=橋本篤(ポートレート)
CREA Traveller 2023 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。