シリアスなストーリーもコメディも飄々と演じてしまう浦井健治さんですが、長い間演劇界でトップランナーとして走り続けてきただけあって、舞台に対する情熱は人一倍熱いものをお持ちです。インタビュー後篇では、数々の作品で共演している井上芳雄さんのお話やこれからの演劇界についてもお話しを伺いました。
ミュージカル作品の性質が変わってきている!?
――浦井さんはミュージカルのみならず、ストレートプレイにも積極的にご出演されています。向き合うときの気持ちの違いはありますか?
喉のケアとか、細かいところの違いはあるかもしれませんが、僕は20年近くミュージカルとストレートプレイをやってきて、どっちをやっていても、やること自体は変わらなくなってきました。相乗効果で、どちらもより貪欲になったり、表現しなくてはいけないことがより深く広く、また、求められるものも高くなったりしていますが、井上芳雄さんをはじめとする、両方に出演している役者さんたちは、みんな同じ感覚だと思います。
ただ、歌というものに関して、ちゃんと歌わないといけないのは最低限の技術としてもちろんありますが、作品によっては“歌を歌う”と、作品の質感と合わないということがあるんです。セリフと歌の境目というか……。歌がセリフと同じように聞こえないと、まったく別物になってしまうという作品が増えている感覚はありますね。
――ミュージカル作品が変わってきているという感じですか。
例えば、映画になっているような王道のミュージカル作品だと歌のシーンだけで10分くらいあったりしますよね。歌があって、踊りがあって、タップを踏んで、次の芝居シーンに行く、みたいな。でもここ数年、いや、十数年は歌の中にお芝居があって、お芝居の中に歌があって、行き来している、もしくは同時に進行している、みたいな作品が増えているような気がします。
「明らかに芳雄さんがやっていらっしゃることは別次元」
――井上芳雄さんのお話が出たので、井上さんのお話もぜひ。来年の『二都物語』の上演が発表されました。井上さんとの再演ですね。
前回が12年前ですから、干支が一周しました(笑)。共演自体は2022年の『ガイズ&ドールズ』ぶりなので、そこまで久しぶり感はないですね。
――浦井さんにとって井上芳雄さんはどのような存在の方でしょうか。
先輩であり、兄であり、常に時代を引っ張ってくれている方です。芳雄さんからしたら僕は後輩なのに、同志とか、同世代とか、いつも「一緒に」というふうに言ってくれています。
ミュージカル愛が幼少期からある方なので、その未来を見据えて、自分のポジションで何ができるかに尽力されています。プロデューサー目線もあり、そういう能力に長けているので、司会業やバラエティなど、演技とは異なる仕事を行う意味もすべて咀嚼して活躍されていると思うんです。そういう人ってなかなかいないですよね。
芳雄さんのような方が、楽しみながら一緒に歩んでくれるのは、本当にすごい時代だと思います。僕はタイミングが良かったと、心からそう思っています。
2024.11.21(木)
文=前田美保
写真=佐藤 亘
スタイリスト=吉田ナオキ
ヘア&メイク=荒井秀美