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 眼光鋭くキリリとした表情で舞台を制するようなイメージが強い加藤和樹さん。いつもの王子様タイプの役柄とは真逆をいく、コメディ作品『裸足で散歩』に出演中! 不器用で振り回される姿がとてもキュートな、“コメディ作品”での演技や再び共演される皆さんの印象などについて伺いました。


毎日温かい気持ちで過ごせるコメディが楽しい

――2022年の初演を経て、2年ぶりの再演となります。再びポール役を務められる気持ちをお聞かせください。

 素直に嬉しかったです。少人数で楽しい作品でもありましたし、またこのメンバーでやれたらいいなと思っていたので。コメディはなかなかやる機会がないので、またポールとして舞台上に立てるのが、とても嬉しい気持ちでした。

――コメディはやればやるほど、「もっとこうしたい!」という気持ちが生まれてくるものですか?

 欲張ってはいけないのですが、この作品がわりとハッピーな作品で、お客様に温かい気持ちになって帰ってもらえるので、そういう意味では自分の普段とは違ったアプローチになりますね。大体いつも、死んでいるような作品が多いので(笑)。

 死んでいる役をやるからといって気分が落ちるようなことはないのですが、やはり毎日楽しく過ごせるので、コメディっていいなと思います。

――ポールはいろんな人たちに振り回されるような立場ですが、加藤さんにとってポールはどんな存在でしょうか?

 彼はすごく真面目なので、コリーやお母さんのバンクス夫人、そしてヴェラスコさんに対してのリアクションが一番多いんです。そういうところは初演よりも「ここでこういうリアクションが取れるな」とか「今コリーが言ったことに対して、どういう感情になるんだろう」ということを考えます。

 初演ではやはりテンポというか、売り言葉に買い言葉、丁々発止な様子をすごく重視していたんです。もちろん、今回もそういったテンポはすごく大切なのですが、お芝居の中にちゃんと感情の動きがあることを改めて詰めていきたいと思っています。前回が出来てなかったというわけではありませんが、エンターテインメントとして見せる部分もありますからね。

――加藤さんがご出演される作品はわりとシリアスなものが多い印象です。ご自身で演じられて、コメディ作品との相性のようなものをどう感じていらっしゃいますか?

 やはり“面白い人たち”がやるイメージみたいなものが僕の中にあるんです。もちろん、自分がその“面白い人間”かどうかは、自分自身では分からないんですが、面白いことは好きなんです。真面目な作品ほどふざけたくなるというか(笑)。すごく真面目なお芝居をやっているのに「あ、ここでふざけたら絶対に面白いのにな」と思うことは結構あります。

 でも、その面白さを演劇としてちゃんと見せなければいけないというのが難しいのだと思います。計算も必要だけど、生のお芝居の中から生まれる笑いみたいなものが作りだせたら、それが一番正解なんでしょうね。それはきっと毎回違うと思いますし。

 もちろん、絶対にここで笑わせたいみたいなシーンというのもあって、そこで笑いが来ないと寂しい(笑)。そういうところは緊張します。

――再演ということで、改めてこの作品の魅力を感じていらっしゃると思いますが、再演だからこそ伝えたい、この作品の魅力を教えてください。

 コリーが言うセリフに「何でもトライする」というのがあります。僕の座右の銘が「やればできる」。“諦めないこと”というのが僕は重要だと思っていて。人生経験が豊富になればなるほど、「これはやらなくていいかな」とキャパシティがどんどん狭まってくるんですよね。「これは自分に向いてないな」という判断能力が培われるのはすごくいいことだと思うのですが、「でも、やってみたら面白いこともあるかもね」という可能性みたいなものが、まだこんなにあるよ、というのを作品から感じてもらえるといいなと思います。

2024.10.31(木)
文=前田美保
写真=深野未季