インタビュー取材の際に感じた直感で、人を判断する記者。秘書鈴木に代わって、代議士を操ろうとする謎めいた女たち。耳ざわりの良い演説を聞いて、青年政治家を支持する有権者。

 彼らには、清家一郎の本当の姿が見えているのか。

「自戒を込めて言いますが、私たちは、他人のことを『こういう人だ』と決めつけて安心することが多いと思うんです。私も『早見はこうだ!』と決めつけられるたびに、『分かってたまるか!』と反発していました。登場人物の誰かが発する『見くびるな』というセリフが、この物語をラストシーンへと導いてくれたと感じています。

 人を見くびったことのある人、見くびられて傷ついた経験のある人、つまりすべての人に読んでほしいと願っています。この社会の生きづらさの要因が、そこにあると思うからです」

 マトリョーシカの最深部に鎮座するものの正体を知った時、私たちには、どんな世界が見えるだろうか。人間の闇、優しさ、儚さを詰め込んだ小説とドラマを愉しんでほしい。


はやみかずまさ 一九七七年、神奈川県生まれ。二〇〇八年作家デビュー。『イノセント・デイズ』で日本推理作家協会賞、『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞、JRA賞馬事文化賞を受賞。近著に『アルプス席の母』『新! 店長がバカすぎて』など。


(「オール讀物」12月号より)


INFORMATION

TBS系列 金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』

2024年夏スタート  毎週金曜午後10時から

出演:水川あさみ 玉山鉄二/櫻井 翔

ドラマ公式サイト:https://www.tbs.co.jp/waraumatryoshka_tbs/

笑うマトリョーシカ(文春文庫 は 60-1)

定価 968円(税込)
文藝春秋
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2024.06.10(月)