この記事の連載

◆八木下農園 発酵西内小夏、山科茶舗・新茶粟田早生 高梨茶園・黒文字新芽 アスパラガス

 神奈川県「八木下農園」の石内小夏とバラを発酵させて仕上げた無加糖のアイスクリームに合わせたのは、西内小夏のジュレと、みりんでコンポートにした西内小夏の皮、昆布茶の泡のソース、黒文字の新芽。柑橘の清々しい香りが力強く押し寄せ、豊かな余韻をもたらします。

 黒文字の新芽のシャープな香りと苦みがアクセント。同じく黒文字の新芽とアスパラガスを加えた今年出来立ての新茶は、福岡県朝倉市「山科茶舗」から。

 「日本で一番早い新茶になります。ちょっと鰹っぽいニュアンスがあるので、アスパラガスの旨みを合わせました。柑橘には、日本の食材が持つ旨みがよく合うと思います。アイスクリームにはもうひとつ香りがほしくて、フレッシュなバラの花びらを石内小夏と一緒に発酵させました」と、田中さん。

◆八木下農園・美生柑 甘夏 発酵レモン 発酵マンゴー、千代ノ園・いずみ コーヒー 月桃 ライチ

 季節の素材を使った水羊羹は、シグナチャーメニューともいうべきひと皿。グレープフルーツにも似た美生柑のゼリー寄せと、発酵させたレモンの香りを移したゼリー、発酵させたマンゴーを合わせた白餡を3層に。白餡以外は無加糖で、柑橘の清々しい酸味とみずみずしさ、マンゴーの厚みある果実味が白餡のやさしさと繊細に重なり合い、つぶつぶとした美生柑の食感も魅力的です。

 美生柑の苦みとよく合う福岡県八女市「千代乃園」の和紅茶には、マンゴーと相性のよいコーヒーと、月桃、3年熟成させたライチのシロップを加えて。さまざまな香りが重なり合って引き出される、ふくよかなハーモニーが楽しめます。

◆発酵枇杷 発酵大和橘 HERB STAND・カキドオシ、やまとう栗原園・金谷緑 高梨茶園・八重桜 パインアップル

 コースのなかで必ず登場するのが、温かいデザート。衣をつけて揚げたフレッシュな長崎県産枇杷のなかには、発酵させた無加糖の枇杷が詰められ、驚くほどの甘みと果実味が広がります。

 その上にフレッシュなビワとカキオドシ(シソ科のハーブ)をあしらい、枇杷の種を煮出したソースとバナナの葉のオイルを添えて。八重桜のたおやかな香りとパイナップル果実味や酸味、甘みを加えた埼玉県狭山市「やまとう栗原園」の和紅茶が、甘やかに調和します。

 「『枇杷は香りが弱い』と言われるので、枇杷の香りを伝えたくてつくりました。おそらく、日本一枇杷が香るひと皿だと思います」と、田中さん。

◆マルヒ製茶・MB209 発酵ルージュロワイヤル 発酵龍眼 桜桃 松ぼっくり

 続いて登場したのは、ルージュロワイヤルという品種のバラと松ぼっくりを乳酸発酵させて酸味を引き出し、発酵させた竜眼のエキスを加えたスープに、発酵させた竜眼、山形産サクランボを加え、蒸し焼きにしたひと皿。

 イチゴのような香りを持つ静岡県磐田市「マルヒ製茶」の和紅茶に、発酵させたバラを加えたグラニテをかければ、サクランボや竜眼の果実味に支えられ、気品あるバラの香りが豊かに広がります。

2024.05.21(火)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵