晴明がかける呪(しゅ)を目撃した博雅は「何だかすごいし、面白そう」と、非常に真っすぐな好奇心から彼に会いに行きます。

 そこで、ある頼み事をするものの、むげに断られたあげく、邪険に扱われる(笑)。高貴な生まれの博雅にとって、軽くあしらわれるなんて、初めての経験だったはずです。だからこそ拒否感も覚えますが、同時に、“未知との遭遇”に強く心を惹かれます。

 共に時間を過ごし、晴明のペースにかき回され、彼の手のひらで転がされる中で、博雅も自分自身を理解していく。博雅はあまり余計なことを考えない人物である分、自らを客観視できていないところがあります。

 そんな彼が、自分と正反対の人物と一緒にいることで己を知る。もちろん、晴明と一緒にいたことで自分の姿を捉えられた、ということにも彼は気づきませんが(笑)。

 そんな二人だからこそ共に信じあい、友情という言葉では言い表し切れない深い絆でつながり、それぞれが“解放”へと向かっていきます。

互いの役を入れ替えて探り合ったことも

 博雅を演じるにあたって核に据えていたのは、クライマックスで晴明からかけられる「お前はいい男だな」という言葉です。どんな博雅であったら晴明にそう言わせることができるのか、常に意識していました。

 晴明と博雅の関係性については、監督や賢人くんと話し合って試行錯誤を重ね、じっくりと時間をかけながら組み立てました。ワークショップ形式で、二人で役を入れ替えて演じるなどして、互いの役を探り合いましたね。

 

 リハーサルの段階でかなり細かく演出が入りましたし、監督がその場で新たにセリフを書き加えることも。普段の自分とスイッチを切り替えるというよりも、現場でのコミュニケーションと地続きで博雅を演じている感覚がありました。

「練習していないけれどしょうがない」と挑んだシーン

 平安時代が舞台とはいえ、脚本を初めて読んだ時に受けた現代的な印象も、役への入り込みやすさにつながったと思います。

2024.05.07(火)
著者=夢枕 獏、映画「陰陽師0」製作委員会